OPECプラス、需要回復という世論を味方に、原油価格上昇と限定的増産を画策

 以下は先ほど述べたOPECプラス23カ国のうち、原油の減産(人為的な価格調整)に参加している合計20カ国の原油生産量の合計です。2020年5月に減産を再開した際、急減しました。

 今後も徐々に増加することが見込まれているものの、後述する、世界の石油の消費量の増加見通しに比べれば、規模が小さいため、OPECプラスの原油生産量の増加見通しが、世界の石油の需給バランスを緩める要因にはならないと、筆者は考えています。

図:OPECプラスの原油生産量(減産実施20カ国) 単位:千バレル/日量

出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 原稿執筆時点ではまだ7月5日(月)に延期された第18回OPEC・非OPEC閣僚会議は終わっていません。このため、UAEが主張した減産時の基準となる生産量の引き上げが実現するかどうかは現時点ではわかっていません。

 UAEがこのような主張をした背景の一つに、組織内の発言力の向上、が挙げられると筆者は考えています。OPECプラスのうち、減産免除となっているイラン、リビア、ベネズエラの3カ国を除けば、どの国も、削減するべき量の数値目標を持っています。

 以下のとおり、UAEが主張する基準量の引き上げ(報道では日量320万バレルから同380万バレル)が実現した場合、UAEの減産順守率と削減量の順位が上がる計算になります(2021年6月の実績をもとに計算)。

図:OPECプラスの減産実績(2021年6月)

出所:OPECの資料およびブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 減産順守率は削減量の順位が高位であればあるほど、減産に積極的であると言えます。実際に、昨年夏にサウジが自主減産(必要以上の削減を自主的に行った)際、メディアはサウジが非常に減産に積極的だと報じました。OPECのプレスリリースでもサウジはたたえられていました。

 積極的であることは、組織にとってそれだけなくてはならない存在であり、組織の中でも、必要とされる、ある意味、強い発言力を持つことができるでしょう。このような組織内のパワーバランスを考慮した思惑が、UAEの基準値変更要請の背景にあると、筆者は考えています。