世界の石油消費は「7割経済」の最中。在庫減少は供給減少が主因

 先ほどのグラフで61%上昇した原油に着目します。原油相場は、「インフレ(物価高)」動向に関わる指標として、注目が集まることがあります。

 目下、インフレ動向は、ジャンルを問わず、幅広い、銘柄の価格動向をも左右する、米国の金融政策の方向性に影響を与えるため、注目が集まっています。

 以下の通り、本原稿執筆時点(日本時間7月5日午前時点)で、NY原油先物価格は1バレルあたり75ドル近辺で推移しており、2018年秋の高値水準に接近しつつあります。

 先述の「インフレ」動向に注目が集まっている最中、米国大手金融機関が「100ドル」という、一見すると突拍子もない目標価格を示したこともあり、原油相場自身、100ドルに達してよいのか悪いのか、判断に困っているように、思えます。

「価格上昇=消費拡大」と考える人が、多いかもしれませんが、以下のとおり、世界の石油消費量は、まだ、コロナ前の水準まで回復していません。原油価格はコロナ前の水準を1.6倍以上(+60%以上)も上回っているのに、です。

図:世界の石油消費量

出所:EIA(米エネルギー情報局)のデータをもとに筆者作成

 消費量の回復が不十分であるにもかかわらず、価格が大きく上昇しているのは、主要国の石油在庫が減少していることが主な要因に挙げられます。

 先月のOPEC(石油輸出国機構)プラスの会合で、同在庫が今後、大きく減少する見通しを示されたことがきっかけに、原油相場が一時的に大きく上値を伸ばす時間帯がありました。

図:主要国の石油在庫

出所:EIA(米エネルギー情報局)のデータをもとに筆者作成

 消費の回復が不十分、それでいて在庫が減少しているわけです。このような状況における在庫減少の要因は、生産量が減少していることです。