次の基軸通貨は!?通貨の「グレート・リセット」に向けた動きが加速

 先日、英国で開催されたG7サミットでは、低所得国のCOVID-19危機への対策として、IMF(国際通貨基金)のSDR(特別引出権)を1,000億ドル割り当てることが承認された。

 ジェームズ・リッカーズの『「グレート・リセット」の到来、その1:世界的なインフレーションの新設計図』というレポートによると、通貨市場の方でも長年期待されてきた「グレート・リセット」に向けた動きが加速しているようだ。

「IMFのSDRの基本的な考え方は、ドルを中心とした世界の通貨システムは本質的に不安定であり、改革が必要であるというものだ。ロバート・トリフィンは、支配的な基軸通貨の発行者が貿易赤字を出し、世界の他の国々がその通貨を十分に保有して、発行者から商品を購入し、世界貿易を拡大する必要があるとした。しかし、赤字を長く続けていると、やがて破綻してしまう。これは、1960年代初頭にドルについて言われたことだ。SDRはトリフィンのジレンマを解決してくれる。今後数年の間に、国連や世界銀行などの多国籍組織にSDRが発行され、民主的に選出された機関の監督下にない気候変動インフラやその他のエリートのペットプロジェクトに使われることになるだろう。私はこれを「世界インフレの新設計図」と呼んでいる」

(ジェームズ・リッカーズ)

 2009年以降、IMFは、SDRを大量に新規発行するためのプラットフォームを構築し、SDR建て資産の深い流動性プールを確立するために、ゆっくりとしたステップを踏んできた。

 SDRは、IMF加盟国に大量に発行することができ、将来的には、国際収支の決済、石油価格の決定、エクソン・モービル、トヨタ、ロイヤル・ダッチ・シェルなどの世界最大の企業の財務会計など、世界で最も重要な取引の一部に使用することができる。

ドルの購買力の推移(1913~2020年)

出所:ビジュアルキャピタリスト

 バイデン政権による追加の、かつ大胆な支援策によって、家計収入全体に占める政府給付金の割合は過去最高となる34%まで上昇した。

 言い換えれば、現在、米国の世帯収入の3分の1は国からの給付によるものだということになる。

 米国に続いて英国もテーパリングに及び腰になってきた。もう緩和中毒の中央銀行は何もできないということだ。ただ資産を押し上げ、行けるところまで行くということだろう。インフレに言及する企業の数が急増しており、インフレはすぐそこにまで迫っている可能性が高い。

「認識されている価値が失われることによる痛みは、ここから価格が上昇するにつれて、さらに激しくなるだろう。要するに、ボルカー以来のFRBはかなり無知であり、今もそうである。

 しかし、より注目に値するのは、資産バブルへの対処が明らかに無能であるにもかかわらず、これら4人のFRBのボス全員に示された持続的な信頼である」と、GMOのジェレミー・グランサムは述べているが、より注目に値するのは、資産バブルへの対処が明らかに無能であるにもかかわらず、グリーンスパン、バーナンキ、イエレン、パウエルという4人のFRBのボス全員に示された持続的な信頼である。

 FRBの政策は小手先のみで、麻薬(おカネ)を注射しまくって一過性、一時の元気を与えるだけという緩和依存症に陥っている。「世界インフレの新設計図」はすでに奥の院によって用意されているのかもしれない。歴史と論理に従えば、ばらまいたおカネはいずれインフレ、増税、通貨切下りげなどで減価していくだろう。