金融資産が多ければ何とかなる

 相続税という観点からみると、「相続税をそもそも支払うだけのキャッシュがあるかどうか」が大きな問題になってきます。

 もし、相続財産の中に占める不動産の割合が低く、現預金や上場株式、投資信託、債券などの金融資産や、金地金(ゴールド)などの換金しやすいものが多数を占めるのであれば、相続税の多寡はともかく、支払えないという心配はありません。

 でも、例えば相続財産のうち95%は不動産で、換金性の高い資産がほとんどない、という場合は、不動産の一部を売却して納税資金を確保する必要があります。

 このとき、相続発生後に慌てて売却すると、価値の高い不動産を買い叩かれてしまう恐れもあります。できるだけ生前から、不要な不動産を処分するなど対策をしておくことをお勧めします。

 一方、親御さんの財産の中に不動産など換金性の低い資産は金額的にそれほど多くはない、ということが分かれば、存在の知らなかった多額の金融資産が相続発生後に見つかっても、相続税を支払う資金はありますから何とかなります。

相続人が1人の場合は要注意!簡単でいいので税額シミュレーションを

 不動産を中心に、ざっくりと財産の金額を推定できたなら、相続税額のシミュレーションをしてみましょう。その際、相続人は誰が該当するのかをしっかりと把握することが重要です。

 実は、相続税の計算上、相続財産の金額は同じでも、相続人の人数が少ないほど相続税の額は高くなります。

 例えば相続財産が2億円(基礎控除前)あったとすると、相続税額はそれぞれ

  • 相続人1人:4,860万円
  • 相続人2人:3,340万円
  • 相続人3人:2,460万円

 となり、相続人1人の場合の税額は、3人の場合のおよそ2倍となります。さらに、3人の場合はこの税額を3人で支払えばよいですが、1人の場合は全てを1人で支払わなければなりません。

 ですから、同じ相続財産の額であっても、相続人の人数が少ない方が、納税資金をまかなえるだけの金融資産をより多く準備する必要があるのです。

 これ以外にも、例えば「遺言書があるのか」とか「遺産分割協議がスムーズに進みそうか」といった点も重要なのですが、相続税がかかるのかどうかという観点からは、最低限、今回お話しした内容については確認するようにしておきましょう。ご自身で計算するのが難しかったり、不安に思う場合は、税理士に依頼して試算してもらうのもよいでしょう。