TOPIXも相場の基調に変化なし、米国株の下落で迷いが生じる

 続いて、TOPIX(東証株価指数)の動きについても見ていきます。

■(図2)TOPIX(日足)ギャン・アングルとMACD(2021年6月18日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週のTOPIXも日経平均と同様に、「前半に上昇し、週末にかけて下落」という展開でしたが、週末の下げは日経平均よりも大きく、週足ベースでは2週連続の下落となっています。ギャン・アングルでは、8×1ラインを上抜けしかけたものの、跳ね返されてしまい、4×1ラインが意識されている格好です。

 また、18日(金)終値で節目の1,950pを割り込んでしまいましたが、75日・25日移動平均線もサポートとして意識されそうなところに位置しています。下段のMACDは微妙なところでシグナルを下抜けておらず、TOPIXも相場の基調が大きく変化した兆しは見られません。

 結果的に、FOMCを受けた日本株は初期反応としては「無難に通過した」と言えるのですが、18日(金)の日本株の取引終了後の米国株市場が大きく下落したことで、その判断に迷いが生じています。

 具体的には、18日(金)の米国株市場では、NYダウが前日比で1.58%安、S&P500が1.31%安、NASDAQが0.92%安となったほか、日経225先物取引の終値が大阪取引所で2万8,420円、シカゴCMEで2万8,435円と値を下げています。

 仮に、週明けの日経平均が、大取の終値である2万8,420円まで下落したとなると、25日移動平均線はおろか、レンジの下限(6月2日の安値:2万8,565円)も下抜けてしまうことになるため、注意が必要です。今週21日(月)の株価がどこの水準で踏みとどまれるかが重要になってきます。

 ちなみに、TOPIX先物の終値は1,913pでした。図2のところで意識されている75日・25日移動平均線(先週末時点でそれぞれ1,938p、1,936p)を下抜けてしまうため、こちらも注意が必要です。

FOMC後の相場は早く落ち着く?米国株市場では新たな動きも

 では、果たして、今週の日本株がこのまま沈んでしまうのかについて考えてみたいと思いますが、まずは先週の相場の分岐点となったFOMCについて整理します。

 FOMCやその後に開かれたパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の記者会見では、あらためて現状の金融政策の維持が強調されたほか、ワクチン接種の進展により、「コロナ危機が経済の重しになっている」という文言が声明文から削除されました。

 足元で懸念されている物価上昇についても、強気の姿勢は萎んだものの、「一時的」という見方も崩しませんでした。

 ただ、市場が反応したのは、同時に公表されたFRBメンバーによる経済・金利見通しの方です。

 金利見通しについては、回答した18人のうち、過半数の11人が2023年に少なくとも2回の利上げを想定していることが示されました。3月開催のFOMCでは2024年以降の利上げが想定されていただけに、「思ったよりも早く利上げが始まるのでは」という見方が強まりました。

 さらに、FOMCを開催するFRBの使命は、「物価と雇用の安定」なのですが、FRBのスタンスがこれまでの「雇用>物価」から、「雇用<物価」の方にシフトしたと受け止められたことも影響したかもしれません。

 また、週末18日(金)の米国株が下落したのは、セントルイス連銀のブラード総裁による「インフレの加速でFRBは2022年にも最初の利上げをするだろう」という発言がきっかけでした。

 確かに、FOMCを受けた日米の株式市場は売りの初期反応となりましたが、利上げを想定する金融政策面の時間軸はまだ遠いと言えますし、また、足元の物価上昇が一時的なのか、それとも継続的なのかは専門家や市場関係者のあいだでも見方が分かれているため、今後の経済指標等を粘り強くウオッチしていく必要があるほか、8月のジャクソンホール会合、9月のFOMCの動向を見極めていくことになります。

 そのため、「見極めがつかないあいだは、テーパリング(金融緩和縮小)の議論は急がないだろう」という見通し自体に変わりはないですし、FOMCの結果やFRB要人の発言による株価下落は、「売りの口実になっただけ」と見ることもできます。

 となれば、思ったよりも早く相場が落ち着いてくると考えることもできますが、その一方で、米国株市場では、リフレトレードの手じまいやグロース株の買い戻しといった、新たな動きも出てきています。

 とりわけ、グロース株の買い戻しについては、もうすぐ6月の四半期決算の区切りを迎えることもあり、「ちょっと遠い先の利上げよりも、目先の企業業績」へと相場の視点の時間軸が短くなった可能性があります。