5月終盤以降のレンジに収まった日経平均、やや不透明感強まる
先週末6月18日(金)日経平均終値は2万8,964円となりました。前週末終値(2万8,948円)からは16円高と小幅だったものの、週足ベースでは一応2週連続で上昇しました。
■(図1)日経平均(日足)とMACD(2021年6月18日取引終了時点)
いつもの通り、足元の状況から見ていきます。
先週の日経平均の値動きを振り返ると、前半は上昇志向が強い動きでした。週初の14日(月)に75日移動平均線を上抜け、翌15日(火)には2万9,500円まであと一歩のところまで値を伸ばしていきました。
ただ、そこからの上値は重たく、16日(水)からは売りに押されて上ヒゲの長い陰線となり、FOMC(米連邦公開市場委員会)の結果を受けた17日(木)は、小さな「窓」空けで下落し、75日移動平均線も下抜けてしまいました。週末18日(金)には2万9,000円台の節目も少し下回っています。
株価はFOMCを挟んで上下したわけですが、冒頭でも触れたように、日経平均は週足ベースで16円高のほぼ横ばいの展開で、結局5月終盤から続いたレンジの範囲内に収まったわけです。
ただ、上値ラインに注目すると、3月18日と4月6日の高値を結んだラインを上抜けかけたものの、跳ね返されてしまったほか、15日(火)と16日(水)の2本のローソク足が離れ小島のように取り残される「アイランド・リバーサル」っぽくなっており、チャートの形状からは、相場の改善よりも、やや不透明感の方が強まっていると言えます。
TOPIXも相場の基調に変化なし、米国株の下落で迷いが生じる
続いて、TOPIX(東証株価指数)の動きについても見ていきます。
■(図2)TOPIX(日足)ギャン・アングルとMACD(2021年6月18日取引終了時点)
先週のTOPIXも日経平均と同様に、「前半に上昇し、週末にかけて下落」という展開でしたが、週末の下げは日経平均よりも大きく、週足ベースでは2週連続の下落となっています。ギャン・アングルでは、8×1ラインを上抜けしかけたものの、跳ね返されてしまい、4×1ラインが意識されている格好です。
また、18日(金)終値で節目の1,950pを割り込んでしまいましたが、75日・25日移動平均線もサポートとして意識されそうなところに位置しています。下段のMACDは微妙なところでシグナルを下抜けておらず、TOPIXも相場の基調が大きく変化した兆しは見られません。
結果的に、FOMCを受けた日本株は初期反応としては「無難に通過した」と言えるのですが、18日(金)の日本株の取引終了後の米国株市場が大きく下落したことで、その判断に迷いが生じています。
具体的には、18日(金)の米国株市場では、NYダウが前日比で1.58%安、S&P500が1.31%安、NASDAQが0.92%安となったほか、日経225先物取引の終値が大阪取引所で2万8,420円、シカゴCMEで2万8,435円と値を下げています。
仮に、週明けの日経平均が、大取の終値である2万8,420円まで下落したとなると、25日移動平均線はおろか、レンジの下限(6月2日の安値:2万8,565円)も下抜けてしまうことになるため、注意が必要です。今週21日(月)の株価がどこの水準で踏みとどまれるかが重要になってきます。
ちなみに、TOPIX先物の終値は1,913pでした。図2のところで意識されている75日・25日移動平均線(先週末時点でそれぞれ1,938p、1,936p)を下抜けてしまうため、こちらも注意が必要です。
FOMC後の相場は早く落ち着く?米国株市場では新たな動きも
では、果たして、今週の日本株がこのまま沈んでしまうのかについて考えてみたいと思いますが、まずは先週の相場の分岐点となったFOMCについて整理します。
FOMCやその後に開かれたパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の記者会見では、あらためて現状の金融政策の維持が強調されたほか、ワクチン接種の進展により、「コロナ危機が経済の重しになっている」という文言が声明文から削除されました。
足元で懸念されている物価上昇についても、強気の姿勢は萎んだものの、「一時的」という見方も崩しませんでした。
ただ、市場が反応したのは、同時に公表されたFRBメンバーによる経済・金利見通しの方です。
金利見通しについては、回答した18人のうち、過半数の11人が2023年に少なくとも2回の利上げを想定していることが示されました。3月開催のFOMCでは2024年以降の利上げが想定されていただけに、「思ったよりも早く利上げが始まるのでは」という見方が強まりました。
さらに、FOMCを開催するFRBの使命は、「物価と雇用の安定」なのですが、FRBのスタンスがこれまでの「雇用>物価」から、「雇用<物価」の方にシフトしたと受け止められたことも影響したかもしれません。
また、週末18日(金)の米国株が下落したのは、セントルイス連銀のブラード総裁による「インフレの加速でFRBは2022年にも最初の利上げをするだろう」という発言がきっかけでした。
確かに、FOMCを受けた日米の株式市場は売りの初期反応となりましたが、利上げを想定する金融政策面の時間軸はまだ遠いと言えますし、また、足元の物価上昇が一時的なのか、それとも継続的なのかは専門家や市場関係者のあいだでも見方が分かれているため、今後の経済指標等を粘り強くウオッチしていく必要があるほか、8月のジャクソンホール会合、9月のFOMCの動向を見極めていくことになります。
そのため、「見極めがつかないあいだは、テーパリング(金融緩和縮小)の議論は急がないだろう」という見通し自体に変わりはないですし、FOMCの結果やFRB要人の発言による株価下落は、「売りの口実になっただけ」と見ることもできます。
となれば、思ったよりも早く相場が落ち着いてくると考えることもできますが、その一方で、米国株市場では、リフレトレードの手じまいやグロース株の買い戻しといった、新たな動きも出てきています。
とりわけ、グロース株の買い戻しについては、もうすぐ6月の四半期決算の区切りを迎えることもあり、「ちょっと遠い先の利上げよりも、目先の企業業績」へと相場の視点の時間軸が短くなった可能性があります。
NASDAQは「三角もちあい」を上放れしそうな状況が続く
そのため、今週以降の相場のカギは米NASDAQの動きになるかもしれません。
■(図3)米NASDAQ(週足)とMACD(2021年6月18日取引終了時点)
上の図3は、NASDAQの週足チャートとMACDです。前回のレポートでも紹介しましたが、株価が下落したとはいえ、「三角もちあい」を上放れしそうな状況に変わりはありません。
このまま上抜けできれば、上昇に弾みがつき、最高値を更新していくことになりますが、下段のMACDが下向きのため、いわゆる「逆行現象」の状況となります。その場合、MACDの傾きが上向きになるまで、買いを持続できるかが焦点になります。
また、先週の流れを引き継いで、下落基調が強まった場合は、三角もちあいの下限の線がサポートとして機能するかがポイントになるほか、押し目買いを入れるのは、MACDとシグナルとのクロスの出現まで待つといった戦法が考えられます。
いずれにしても、相場の視点が企業業績に向かうことによってNASDAQが堅調に推移していく相場展開は、ワクチン接種の進展による出遅れ修正が材料視されやすい日本株にとっては、追い風となって意外高を演じる展開も想定されます。
今後の日経平均の目安を探る
なお、今後しばらくの日経平均の株価の目安としては、最近のレポートで紹介した、75日移動平均線乖離(かいり)率のボリンジャーバンドで見ていきます。
■(図4)日経平均の移動平均線乖離率ボリンジャーバンド(2021年6月18日取引終了時点)
足元の75日移動平均線乖離率は中心線(MA)まで上昇した後に再び下回るところに位置しています。今年の2月以降、75日移動平均線乖離率は▲1σ(シグマ)と▲2σを往来しながら水準を切り下げてきましたが、このレンジから脱したことになります。
先週末18日(金)時点で計算すると、75日移動平均線は2万9,096円ですので、MAで2万9,343円、+1σで3万213円、+2σで3万1,082円となります。反対に、下落に転じた場合は▲1σで2万8,476円、▲2σで2万7,606円へ向かうことになります。
もちろん、これまでのレポートでも指摘してきたように、移動平均線乖離率やボリンジャーバンドの値は今後の値動きで変化するため、あくまでも現時点でのざっくりとした目安になります。
最後に補足となりますが、前回のレポートでは、日経平均やTOPIXが方向感に乏しい展開となった場合、マザーズが注目されるかもしれないと触れました。
その理由のひとつが、月末にかけてIPO(新規公開株)ラッシュがあることです。今週のIPOは12銘柄が予定されていますが、うち、マザーズ銘柄は9銘柄となっています。
■(図5)マザーズ先物指数(日足)のギャン・アングルとMACD(2021年6月18日取引終了時点)
ただ、マザーズ先物の値動きをみていくと、ギャン・アングルの3×1ラインで上値が抑えられてしまい、再び25日移動平均線を下回っているほか、下段のMACDとシグナルのクロスも実現しそうな状況にあり、チャートの形状があまり良くありません。
25日移動平均線を下放れ、2×1ラインに向かうような動きになった場合には注意が必要ですので、足元では指数全体よりも個別でマザーズ銘柄をウオッチした方が良いかもしれません。
今週の日本株市場は、気迷いムードが強く、意外高もありそうですが、株価が上に行くのか下に行くのかの判断が困難な状況の中で、方向感を探る展開が基本シナリオとなりそうです。
本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。