今後、投資してみたい金融商品・国(地域)
楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲
今回は、毎月実施している質問「今後、投資してみたい国(地域)」のうち、「アメリカ」「日本」「インド」と答えたお客様の割合に注目します。
当該質問は複数回答可で、選択肢は、日本、アメリカ、ユーロ圏、オセアニア、中国、ブラジル、ロシア、インド、東南アジア、中南米(ブラジル除く)、東欧、アフリカ、特になし、の13個です。
図:質問「今後、投資してみたい国(地域)」で、「アメリカ」「日本」「インド」を選択したお客様の割合
4月度の調査内容をまとめた前回の本欄で、増加の一途をたどる「歳出」を上あごに、それと相反して低迷する「税収」を下あごに見立てた「ワニの口」について触れました。
「アメリカ」「日本」を選択した人の割合の推移がまさに「ワニの口」で、その口の大きさは「日米投資指向差」の大きさだと述べました。
あれから1カ月が経過し、5月の調査結果を見てみると、「ワニの口」はさらに大きくなっていました。つまり、「日米投資指向差」はさらに拡大し、統計史上最大になったのです(+42.1%→+42.4%)。何がその要因になったのでしょうか。
それを探る上でヒントになるのが、「インド」と回答した人の割合の動向です。「インド」と回答した人の割合は、「日本」と同じ様に、この数カ月、低下傾向にあります。
双方に共通する要因によって、「日本」と「インド」が同時に低下している可能性があると、筆者は考えました。
その共通する要因とは、新型コロナウイルスのワクチンの接種率です。Our World in Dataによると、2021年6月7日時点の同ウイルスワクチンの接種率(少なくとも1回接種した人の割合)は、アメリカが51.2%、インドは13.9%、日本は10.9%でした。
そのおよそ1カ月前の5月6日時点では、アメリカが44.7%、インドが9.5%、日本が2.4%でした。早い段階から接種が始まり、すでに人口の半分以上が接種を終えているアメリカと、いまだになお、10分の1強のインドと日本、という構図です。
本設問の結果と、ワクチンの接種率の状況を重ねると、投資家の皆さんは「ワクチンの接種率」に関心を寄せており、接種率を好意的に見ているか否かが、投資してみたいと考える国に選ぶか否かの判断基準になっていると、考えられます。
つまり、「日米投資指向差」の拡大は、「ワクチンの接種率」の格差拡大によって起きていると、考えられます。
「ワニの口」の拡大は、片方の上昇ともう片方の低下の同時進行によって起きます。片方が上昇し、もう片方が横ばい、ではありません。
「ワニの口」(ここで言う日米投資指向差)の拡大は、アメリカを好意的にとらえ、同時に、日本を中立ではなく、悲観的に見ているために起きていると言えます。
今後、「日米投資指向差」という「ワニの口」が、閉じるかさらに大きく開くのかは、ワクチンの接種率の動向にかかっているとみられます。
アメリカの接種率が上昇せず、日本の接種率が上昇すれば、「日米投資指向差」は縮小するとみられます。引き続き、「日米投資指向差」とワクチンの接種率の動向に注目していきたいと思います。
表:今後、投資してみたい金融商品 2021年5月調査時点 (複数回答可)
表:今後、投資してみたい国(地域) 2021年5月調査時点 (複数回答可)