はじめに
今回のアンケート調査は2021年5月31日(月)~6月2日(水)の期間で行われました。
5月末の日経平均は2万8,860円で取引を終え、月足ベースでは2カ月連続の下落となりました。前月末終値(2万8,812円)からの上げ幅は48円とわずかでしたが、月間の値幅(高値と安値の差)は2,300円と大きく、荒っぽい印象でした。
あらためて、月間の値動きを振り返ると、大型連休明けで始まった日経平均は戻り基調だったものの、2万9,500円水準からは上値が重たくなり、さらに、米国の物価上昇に伴う金利上昇の動きや、国内の新型コロナウイルスの感染状況が芳しくなかったことなどを受けて急落に転じ、わずか3日間で2,000円超の下げ幅を見せ、2万8,000円台を下回る場面もありました。
その後は、米金利の落ち着きによる値ごろ感の買いや、国内の新型コロナウイルスのワクチン接種が進展し始めたことによる日本株の出遅れ修正などもあって、月末にかけては下げ幅を回復する動きが続き、2万9,000円台付近まで値を戻しました。
このような中で行われた今回のアンケートは6,300名を超える個人投資家からの回答を頂きました。
日経平均と米ドル/円の見通しDIは、それぞれ改善し、「株高・円安」となりました。依然として、米国の金利動向などに左右されやすいながらも、遅ればせながら世界経済の回復の流れに追いつこうとする日本の状況への期待感が反映され始めたと思われます。
次回も是非、本アンケートにご協力をお願いいたします。
日経平均の見通し
楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之
「日本株への悲観的な見方が改善」
今回調査における日経平均の見通しDIの結果は、1カ月先がマイナス3.60、3カ月先はプラス5.85となりました。前回調査がそれぞれマイナス14.80、マイナス3.76でしたので、両者ともにDIの値を大きく改善させた格好です。
回答の内訳グラフで細かく見ていくと、1カ月先は中立派が約55%と、半数以上が中立派となっており、強気派は20%にとどまっています。
DIの改善は月末にかけての株価が戻り基調だったことが寄与したと思われますが、継続的な株価上昇に対しては、まだ「しばらくは荒れる場面もありそう」という雰囲気が感じ取れます。
一方、3カ月先については、強気派が30%台を超えてきました。「その頃にはワクチン効果も表れ、国内の経済・社会環境も良くなっているだろう」という見方が強まっているような印象です。
6月相場入りとなった国内株市場ですが、日経平均は6月7日の取引終了時点で、2万9,000円台からの方向性を探る展開となっています。
国内の新型コロナウイルスをめぐる状況については、ワクチン接種の進展が報じられているように、日本株の出遅れ修正という流れ自体は今後も基本的に変わらず、経済・生活の正常化期待がメインの動きとなっていますが、日経平均の2万9,000円台あたりが出遅れ修正の「買い戻し」から「買い上がり」の分かれ目となっているのかもしれません。
また、最近の日本株は米国株市場のムードに振り回されている面もあります。例えば、米経済指標の結果を受けた金利市場の反応や、米FRB(米連邦準備制度理事会)による金融緩和縮小観測の進展・後退によって、株価が上げ下げを繰り返す展開が目立っています。
経済の強さによってもたらされる長期金利の上昇は、PER(株価収益倍率)の面で割高となるIT・ハイテク関連銘柄が売られやすくなる一方で、景気敏感株や金融株が買われやすくなり、株価指数では「NASDAQが売られ、NYダウやS&P500は比較的堅調」という構図となります。
反対に、金利が低下・落ち着いている局面では、NASDAQが買われる展開となります。日本株も日経平均とTOPIX(東証株価指数)とのあいだで優位が入れ替わることが増えました。こうした相場展開は少なくとも、6月15日~16日に開催される米FOMC(連邦公開市場委員会)までは続くことが想定されます。
確かに、米国株市場は高値圏で推移しており、株価水準自体は堅調さを保っていますが、景気敏感株の中でも選別が進み始めたことや、金利・物価上昇の悪影響の懸念、ビットコインなど仮想通貨価格の荒っぽい動き、「ミーム株」と呼ばれる一部の個別銘柄で見られる投機的な動きなど、不安定さも徐々に増しています。
そのため、思ったよりも大きい米国発の株価調整局面が到来する可能性には備えておく必要がありそうです。
楽天DI 2021年5月
楽天証券経済研究所 根岸 美知代
コロナ変異株が拡大、三回目の緊急事態宣言が東京・大阪などに発令される中、「皆さまは投資をどうしていますか?」
【今月の質問1】 2021年に入って、日本株、または日本株を組み入れている投資信託の売買をしましたか?
コロナ変異株が拡大、三回目の緊急事態宣言が東京・大阪などに発令される中、皆さまが日本株、投資信託(日本株を組み入れている)の売買をどうされているのか聞いてみました。
「買った」または「売った」方が全体の54.76%、「何もしていない」方が45.24%と、ほぼ半数に分かれました。
売買をされた方は、「買った」が45.71%、「売った」が9.05%と、「買った」方が多くいらっしゃいました。さて、「買った」方、「売った」方はどんな日本株を選んだのでしょうか。それぞれの上位銘柄を発表いたします。
【今月の質問2】 2021年に入ってから買った日本株の銘柄名を1つだけ教えてください(投資信託は含まず)
順位 | 銘柄コード | 銘柄名 | 件数 |
---|---|---|---|
1 | 8306 | 三菱UFJフィナンシャル・グループ | 85 |
2 | 9202 | ANAホールディングス | 65 |
3 | 7203 | トヨタ自動車 | 59 |
4 | 9201 | 日本航空 | 55 |
5 | 4502 | 武田薬品 | 54 |
6 | 9434 | ソフトバンク | 52 |
7 | 5020 | ENEOSホールディングス | 51 |
7 | 4755 | 楽天グループ | 51 |
9 | 2914 | 日本たばこ産業 | 50 |
10 | 4689 | Zホールディングス | 42 |
10 | 8591 | オリックス | 42 |
12 | 8604 | 野村ホールディングス | 41 |
13 | 7201 | 日産自動車 | 29 |
13 | 8410 | セブン銀行 | 29 |
13 | 6920 | レーザーテック | 29 |
16 | 6758 | ソニーグループ | 28 |
17 | 6613 | QDレーザ | 27 |
18 | 9432 | 日本電信電話 | 26 |
19 | 2503 | キリンHD | 25 |
19 | 9101 | 日本郵船 | 25 |
※上記はアンケートの結果集計で、楽天証券の推奨ではありません。 出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成 |
【今月の質問3】 2021年に入ってから売った日本株の銘柄名を1つだけ教えてください(投資信託は含まず)
順位 | 銘柄コード | 銘柄名 | 件数 |
---|---|---|---|
1 | 4755 | 楽天グループ | 61 |
2 | 2914 | 日本たばこ産業 | 56 |
3 | 8306 | 三菱UFJフィナンシャル・グループ | 52 |
4 | 9434 | ソフトバンク | 36 |
5 | 5020 | ENEOSホールディングス | 35 |
6 | 7203 | トヨタ自動車 | 33 |
7 | 8411 | みずほフィナンシャルグループ | 31 |
8 | 9984 | ソフトバンクグループ | 27 |
8 | 9201 | 日本航空 | 27 |
8 | 2768 | 双日 | 27 |
11 | 8591 | オリックス | 26 |
12 | 9202 | ANAホールディングス | 24 |
13 | 4689 | Zホールディングス | 21 |
14 | 8002 | 丸紅 | 20 |
15 | 9831 | ヤマダホールディングス | 19 |
15 | 4563 | アンジェス | 19 |
15 | 6628 | オンキヨーホームエンターテイメント | 19 |
15 | 8267 | イオン | 19 |
15 | 8698 | マネックスグループ | 19 |
15 | 6723 | ルネサスエレクトロニクス | 19 |
※上記はアンケートの結果集計で、楽天証券の推奨ではありません。 出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成 |
今回もたくさんのご意見をありがとうございました。
為替DI:6月のドル/円、個人投資家の予想は?
楽天証券FXディーリング部 荒地 潤
楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示しています。
「6月のドル/円は、円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」
楽天証券が先月末に実施した相場アンケート調査によると、回答を頂いた個人投資家6,304人のうちの約43%(2,692人)が、6月のドル/円は「ドル高/円安」に動くと予想しています。先月に比べて、円安見通しが増えています。
一方で「ドル安/円高」は19%(1,220人)まで減りました。「動かない(わからない)」は38%(2,392人)でした。
5月のドル/円は、7日につけた108.38円が安値。米国の4月雇用統計が予想を大きく下回ったことがドル売りにつながりました。
しかし、ワクチン接種が順調に進む米国では経済活動正常化へ向けた期待が強く、FRBが今後数カ月以内に緩和縮小の議論を開始するとの憶測が広がるなかで、月末に110円までドル高/円安が進みました。
バイデン大統領は、アメリカ独立記念日の7月4日までに、少なくとも1回の接種を受けた成人の割合を70%以上にする目標を掲げています。日本の菅首相も全速力で国民接種を推進しています。
結局、今はワクチンなのです。緊急事態宣言による外出制限で、日本の感染者は一時的に減りました。しかし解除した途端に感染が再拡大。
そしてまた外出制限に逆戻り。こんなことを延々に繰り返すつもりだったのでしょうか。負のループを断ち切るには、ワクチンしかないことは最初からわかっていたはずです。
では、ワクチンが行きわたった後の世界経済はどうなるのか? 力強い景気回復と共に抑圧されていた消費が一気に爆発して、狂乱物価時代がやってくるのでしょうか。
あるいは景気停滞が長期間続くのか。最初は経済再開と物価上昇がセットでやってくると予想する人の方が多かったです。しかし、今では見方が分かれています。
ワクチン接種を終えたからといって、人々の生活はそんなに簡単に元通りにならない。変異株が現れるなかでウイルスに対する恐怖を完全に消すことはできない。などという意見が増えていて、コロナ後の人々の行動パターンの予想は難しくなっています。
ただ、夏に向けては解放感から、消費が爆発的に拡大する可能性は高いといわれています。供給が需要急増に追いつけず、モノ不足からインフレが一時的に跳ね上がります。
それに反応して異常に低い状態に置かれていた金利が大幅上昇。しかし中央銀行はインフレ放置だから利上げはしません。
低金利継続と消費回復を追い風にして株式市場の活況が継続するでしょう。一方、金利差による「ドル買い」と、リスクオンによる「ドル売り」に挟まれて、ドル/円はレンジ相場が継続すると考えます。
楽天証券の相場アンケート調査によると、個人投資家の34%が6月のユーロ/円は「ユーロ高/円安」に動くと予想しています。先月は26%でした。
5月のユーロ/円は、2年3カ月ぶりの134円台までユーロ高が進みました。それに伴いユーロ高予想も増えたようです。「ユーロ安/円高」は15%まで減っています。しかし、最も多かった回答は「動かない(わからない)」の 51%でした。
楽天証券の相場アンケート調査によると、個人投資家の28%が6月の豪ドル/円は「豪ドル高/円安」に動くと予想しています。先月は23%でした。
「豪ドル安/円高」に動くは15%。最も多かった回答は相変わらず「動かない(わからない)」で57%でした。
今後、投資してみたい金融商品・国(地域)
楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲
今回は、毎月実施している質問「今後、投資してみたい国(地域)」のうち、「アメリカ」「日本」「インド」と答えたお客様の割合に注目します。
当該質問は複数回答可で、選択肢は、日本、アメリカ、ユーロ圏、オセアニア、中国、ブラジル、ロシア、インド、東南アジア、中南米(ブラジル除く)、東欧、アフリカ、特になし、の13個です。
図:質問「今後、投資してみたい国(地域)」で、「アメリカ」「日本」「インド」を選択したお客様の割合
4月度の調査内容をまとめた前回の本欄で、増加の一途をたどる「歳出」を上あごに、それと相反して低迷する「税収」を下あごに見立てた「ワニの口」について触れました。
「アメリカ」「日本」を選択した人の割合の推移がまさに「ワニの口」で、その口の大きさは「日米投資指向差」の大きさだと述べました。
あれから1カ月が経過し、5月の調査結果を見てみると、「ワニの口」はさらに大きくなっていました。つまり、「日米投資指向差」はさらに拡大し、統計史上最大になったのです(+42.1%→+42.4%)。何がその要因になったのでしょうか。
それを探る上でヒントになるのが、「インド」と回答した人の割合の動向です。「インド」と回答した人の割合は、「日本」と同じ様に、この数カ月、低下傾向にあります。
双方に共通する要因によって、「日本」と「インド」が同時に低下している可能性があると、筆者は考えました。
その共通する要因とは、新型コロナウイルスのワクチンの接種率です。Our World in Dataによると、2021年6月7日時点の同ウイルスワクチンの接種率(少なくとも1回接種した人の割合)は、アメリカが51.2%、インドは13.9%、日本は10.9%でした。
そのおよそ1カ月前の5月6日時点では、アメリカが44.7%、インドが9.5%、日本が2.4%でした。早い段階から接種が始まり、すでに人口の半分以上が接種を終えているアメリカと、いまだになお、10分の1強のインドと日本、という構図です。
本設問の結果と、ワクチンの接種率の状況を重ねると、投資家の皆さんは「ワクチンの接種率」に関心を寄せており、接種率を好意的に見ているか否かが、投資してみたいと考える国に選ぶか否かの判断基準になっていると、考えられます。
つまり、「日米投資指向差」の拡大は、「ワクチンの接種率」の格差拡大によって起きていると、考えられます。
「ワニの口」の拡大は、片方の上昇ともう片方の低下の同時進行によって起きます。片方が上昇し、もう片方が横ばい、ではありません。
「ワニの口」(ここで言う日米投資指向差)の拡大は、アメリカを好意的にとらえ、同時に、日本を中立ではなく、悲観的に見ているために起きていると言えます。
今後、「日米投資指向差」という「ワニの口」が、閉じるかさらに大きく開くのかは、ワクチンの接種率の動向にかかっているとみられます。
アメリカの接種率が上昇せず、日本の接種率が上昇すれば、「日米投資指向差」は縮小するとみられます。引き続き、「日米投資指向差」とワクチンの接種率の動向に注目していきたいと思います。
表:今後、投資してみたい金融商品 2021年5月調査時点 (複数回答可)
表:今後、投資してみたい国(地域) 2021年5月調査時点 (複数回答可)
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