日経平均の見通し

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

「日本株への悲観的な見方が改善」

 今回調査における日経平均の見通しDIの結果は、1カ月先がマイナス3.60、3カ月先はプラス5.85となりました。前回調査がそれぞれマイナス14.80、マイナス3.76でしたので、両者ともにDIの値を大きく改善させた格好です。

 回答の内訳グラフで細かく見ていくと、1カ月先は中立派が約55%と、半数以上が中立派となっており、強気派は20%にとどまっています。

 DIの改善は月末にかけての株価が戻り基調だったことが寄与したと思われますが、継続的な株価上昇に対しては、まだ「しばらくは荒れる場面もありそう」という雰囲気が感じ取れます。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成 

 一方、3カ月先については、強気派が30%台を超えてきました。「その頃にはワクチン効果も表れ、国内の経済・社会環境も良くなっているだろう」という見方が強まっているような印象です。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 6月相場入りとなった国内株市場ですが、日経平均は6月7日の取引終了時点で、2万9,000円台からの方向性を探る展開となっています。

 国内の新型コロナウイルスをめぐる状況については、ワクチン接種の進展が報じられているように、日本株の出遅れ修正という流れ自体は今後も基本的に変わらず、経済・生活の正常化期待がメインの動きとなっていますが、日経平均の2万9,000円台あたりが出遅れ修正の「買い戻し」から「買い上がり」の分かれ目となっているのかもしれません。

 また、最近の日本株は米国株市場のムードに振り回されている面もあります。例えば、米経済指標の結果を受けた金利市場の反応や、米FRB(米連邦準備制度理事会)による金融緩和縮小観測の進展・後退によって、株価が上げ下げを繰り返す展開が目立っています。

 経済の強さによってもたらされる長期金利の上昇は、PER(株価収益倍率)の面で割高となるIT・ハイテク関連銘柄が売られやすくなる一方で、景気敏感株や金融株が買われやすくなり、株価指数では「NASDAQが売られ、NYダウやS&P500は比較的堅調」という構図となります。

 反対に、金利が低下・落ち着いている局面では、NASDAQが買われる展開となります。日本株も日経平均とTOPIX(東証株価指数)とのあいだで優位が入れ替わることが増えました。こうした相場展開は少なくとも、6月15日~16日に開催される米FOMC(連邦公開市場委員会)までは続くことが想定されます。

 確かに、米国株市場は高値圏で推移しており、株価水準自体は堅調さを保っていますが、景気敏感株の中でも選別が進み始めたことや、金利・物価上昇の悪影響の懸念、ビットコインなど仮想通貨価格の荒っぽい動き、「ミーム株」と呼ばれる一部の個別銘柄で見られる投機的な動きなど、不安定さも徐々に増しています。

 そのため、思ったよりも大きい米国発の株価調整局面が到来する可能性には備えておく必要がありそうです。