中央政治局が開いた会議では、3人目の出産を促すために、関連する育児政策、経済社会政策をパッケージで実施する必要性をうたってはいます。そこには、教育の公平性を促すこと、家庭教育の支出を減らすこと、育児休暇と育児保険制度を充実させること、税収、住宅などの支持政策を強化すること、職場における女性の合法的権益を保障することなどが含まれます。

 政府としても、前述に紹介した国民、特に女性の不安や懸念を理解はしているようで、そこを緩和する政策を出さない限り、出生者数の増加は見込めず、少子高齢化時代にも適応できないと考えていることは確かなようです。

 問題は、この最高意思決定機関による政治的決定を、いかにして具体的な政策に落とし込んでいくかでしょう。

 本レポートで整理してきたように、国民の関心、懸念は非常に明確であり、故に、ピンポイントかつダイナミックに政策を施すことができれば、出生者数の低下(2020年は約1,200万人)に歯止めをかけ、少子高齢化時代にうまく適応できる可能性はあります。

 私が複数の中国政府関係者に話を聞いた限り、今回の決定を受けて、全国人民代表大会常務委員会による《人口与計画生育法》改正を経れば、3人目許容の政策を即座に実施できる、「遅くとも今年の年末までには実施される見込み」(国務院幹部)のようです。

 仮に、それまであと半年あるとして、この間に、国民に「それなら2人目、3人目を産むのを考えてもいい」と思わせる各種政策をパッケージで打ち出せるかどうかが重要になってくるのでしょう。

 中国の人口動態は、中国経済、マーケットの動向に長期的、根源的に影響を与える要素の一つです。今後とも何か動きがあれば、適宜、追跡、分析を行っていきたいと思います。