中国政府は国民の不安や懸念に応えられるのか?
国はこれら国民の声や懸念を承知しているでしょう。ただ制限を緩和するだけでは、効果が限定的であることは、2人目の時点でも証明されており、3人目ではなおさらそうでしょう。Yさんは次のように指摘しています。
「中国において、“許容”はすなわち“要求”を意味する。政府は国民に対して、産んでもいい、ではなく、産むように、と言っているに等しいのです。政府は、単に子供をこれまでよりも多く産むように、ではなく、計画に基づいて多く産むように、と言っているのです。3人目を許容しておきながら、計画生育を撤廃しないのは、生育権を政府の手中に収めておくためです。国民が何人まで産むかを決定する権限は、国民ではなく、政府にあるという権力構造を変えたくないのです」
中国政府は2021年1月1日から「離婚冷静期」という政策を実施していますが、Yさんに言わせれば、これも、家庭を安定させ、国民の出産を促そうという施策の一つだとのことです。
「離婚冷静期」とは、夫婦が協議離婚をする際、当事者たちに30日間を強制的に与え、この期間に冷静になって、離婚を考え直させるという政策です。政府の統計によれば、この政策は効果的だったようです。
2020年第4四半期(10~12月)、離婚登記をした人数が106.3万組だったのに対し、同政策実施後の2021年第1四半期(1~3月)は29.6万組まで減ったとのこと。離婚者数が減れば、出生者数を促せると考えているのでしょう。
また、全国各地における結婚登記は7年連続で下降していて、2013年時点で1,347万組だったのが、2020年には813万組と、40%減ったとのことです。ただでさえ、結婚者数が減っている状況下で、離婚者数が増える傾向をせき止めたい、さもなければ、出生者数を増やすことが困難になる、政府当局はそのように考えているのでしょう。
さらに、前出の国家衛生健康委員会責任者によれば、第13次五カ年計画期間中(2016~2020年)、20~34歳の出産適齢期に属する女性の数は、年平均で340万人減り、直近の2020年は前年同期比で366万人減ったとのことですから、政府としては、とにかくあらゆる方法を使って、より多くの家庭に2人目、3人目を産んでもらうべく働きかけていくのでしょう。