中長期的に見て、とどまるべきところで下げ止まっている印象

 また、トレンドの勢いと今後の方向性についても見ていきます。

■(図3)日経平均(日足)の対数チャートとギャン・アングル(2021年5月14日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図3は、日経平均の日足対数チャートに、2つのギャン・アングルを重ねたものです。コロナ・ショック時の安値(2020年3月19日)を起点とした赤いギャン・アングルと、コロナ・ショック前のトレンドを示す、2019年8月26日を起点とした青いギャン・アングルです。

 日経平均は先週の下落によって、赤いギャン・アングルの4×1ラインを下抜けてしまい、なんとか踏みとどまっている状況ですが、ちょうど青いギャン・アングルの8×1ラインのところでもあります。相場を中長期的に見て、とどまるべきところで下げ止まっている印象となっています。

 赤いギャン・アングルがコロナからの立ち直りトレンド、青いギャン・アングルがコロナを想定する以前のトレンドを意味しているため、しばらくはこれらの線を意識しながら株価が上下する展開が想定されます。また、市場のムードが悪化した場合には、200日移動平均線で下げ止まれるかがポイントになります。

 したがって、今週は戻りを試す展開がメインシナリオと考えて良さそうですが、(1)株価下落の要因となった米物価上昇とそれに伴う金利上昇懸念の動向、(2)需給動向の思惑がポイントになります。

 まず(1)については、米長期金利の上昇が一服したことを受けて先週末(14日)の株式市場が反発したことで、市場はある程度の物価上昇懸念を織り込んだと解釈できますが、果たしてそれが、FRB(米連邦準備制度理事会)が指摘しているような「一時的」なものにとどまるのか、それとも想定以上に長引いてしまうのかを今後発表される米経済指標をにらみつつ探っていくことになります。

 ちなみに、今週の米国では5月NY連銀景気指数やFOMC(米連邦公開市場委員会)議事録、4月中古住宅販売などが公表されるほか、中国でも4月工業生産や小売売上高などが17日(月)にまとめて公表されます。日本国内でも1-3月期GDP速報値が18日(火)に発表される予定ですが、米金利の動きに敏感になる場面はまだまだ多そうです。

 次に、(2)についてですが、信用取引の追証など、先週の株価下落で多く発生したと思われるポジション解消の動きが影響を与える可能性があるほか、日銀のETF(上場投資信託)買いの動向も注目されそうです。

 日銀は、先週の下落局面でもETF買いを入れておらず、どういうルールで買いを入れるのかが不透明になっています。あまり可能性は高くなさそうですが、「どのくらい下げたら買うのか?」を見極めるために下値を試す展開も一応は考えておく必要があるかもしれません。