日経平均は大幅下落。今後は戻りを試す可能性が高い?

 先週末5月14日(金)の日経平均株価は2万8,084円で取引を終え、前週末終値(5月7日の2万9,357円)からの下げ幅が1,273円と大きなものとなりました。

 前回のレポートでは、全体の論調として「株価は戻りを試しそう」としていましたが、見通しをハズしてしまい、当レポートを参考にしていただいた読者の皆さまにはご迷惑をお掛けする結果となってしまいました。

 確かに、レポート内では米国の物価上昇やそれに伴う金利上昇への警戒について触れ、「いつ下げてもおかしくはないので深追いは禁物」としていたものの、思っていたよりも早く下げてしまったというのが正直なところです。

 見通しの甘さを反省しつつ、今回も足元の相場状況と今後のポイントについて整理していきます。

■(図1)日経平均(日足)の動き(2021年5月14日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週の日経平均の値動きを振り返ると、週初の10日(月)は上昇して始まりました。25日移動平均線上を回復したほか、上値ライン(1)も上抜けて、前週からの戻りを順調に試しそうな状況となっていました。

 ただし、翌11日(火)からの市場は一転して下落へとかじを切っていきました。この日の株価は、前日に折角回復した25日移動平均線や、75日移動平均線を「窓」空けで下抜け、取引時間中には5日移動平均線も下回ってしまい、市場のムードが一気に悪化していきました。

 その後の12日(水)・13日(木)も下落は続き、3日間の下げ幅が2,000円を超えたほか、25日移動平均線が75日移動平均線を下抜ける「デッド・クロス」も出現しています。

 さすがに下げ過ぎの反動もあり、週末の14日(金)は反発し、節目の2万8,000円台まで戻して週の取引を終えていますが、下抜けてしまった3本の移動平均線までにはまだ距離があるほか、200日移動平均線の存在の影ものぞかせている状況です。

 ちなみに14日(金)時点での5日移動平均線は2万8,361円、25日線が2万9,165円、75日線が2万9,246円、そして200日線が2万6,364円です。14日(金)の終値(2万8,084円)からの距離は、上方向で最も遠い75日線で1,162円、下方向の200日線で1,720円という距離感です。先週末の225先物取引の終値が大阪取引所で2万8,280円、シカゴCMEで2万8,295円と上昇しているため、距離感的には引き続き戻りを試す可能性の方が高そうです。

戻りを試す場合の目安は3万16円

 では、このまま戻りを試す展開となった場合、どこまでの戻りを想定するのが良いのでしょうか?

■(図2)日経平均25日移動平均乖離率のボリンジャーバンド(2021年5月14日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡのデータを元に筆者作成

 上の図2は日経平均(日足)の25日移動平均線乖離(かいり)率の推移とそのボリンジャーバンドです。

 足元のバンドの幅が昨年8~10月の頃より動きが大きくなっていることや、今年に入ってからの25日移動平均線乖離率は+2σ(シグマ)にタッチしたところで止まる傾向があること、そして、バンド全体が右肩下がりになっていることが分かります。

 これらを踏まえ、このまま株価が戻り基調を続けるのであれば、バンドの+2σまで動くことも想定できます。14日(金)時点の+2σは+2.92%ですので、同日の25日移動平均線(2万9,165円)から計算すると、3万16円となります。

 もちろん、+2σや移動平均線の値は今後の値動きによって変化していきますし、途中の+1σなどで戻りがストップする可能性もありますが、現時点での大体の目安としては参考になりそうです。

中長期的に見て、とどまるべきところで下げ止まっている印象

 また、トレンドの勢いと今後の方向性についても見ていきます。

■(図3)日経平均(日足)の対数チャートとギャン・アングル(2021年5月14日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図3は、日経平均の日足対数チャートに、2つのギャン・アングルを重ねたものです。コロナ・ショック時の安値(2020年3月19日)を起点とした赤いギャン・アングルと、コロナ・ショック前のトレンドを示す、2019年8月26日を起点とした青いギャン・アングルです。

 日経平均は先週の下落によって、赤いギャン・アングルの4×1ラインを下抜けてしまい、なんとか踏みとどまっている状況ですが、ちょうど青いギャン・アングルの8×1ラインのところでもあります。相場を中長期的に見て、とどまるべきところで下げ止まっている印象となっています。

 赤いギャン・アングルがコロナからの立ち直りトレンド、青いギャン・アングルがコロナを想定する以前のトレンドを意味しているため、しばらくはこれらの線を意識しながら株価が上下する展開が想定されます。また、市場のムードが悪化した場合には、200日移動平均線で下げ止まれるかがポイントになります。

 したがって、今週は戻りを試す展開がメインシナリオと考えて良さそうですが、(1)株価下落の要因となった米物価上昇とそれに伴う金利上昇懸念の動向、(2)需給動向の思惑がポイントになります。

 まず(1)については、米長期金利の上昇が一服したことを受けて先週末(14日)の株式市場が反発したことで、市場はある程度の物価上昇懸念を織り込んだと解釈できますが、果たしてそれが、FRB(米連邦準備制度理事会)が指摘しているような「一時的」なものにとどまるのか、それとも想定以上に長引いてしまうのかを今後発表される米経済指標をにらみつつ探っていくことになります。

 ちなみに、今週の米国では5月NY連銀景気指数やFOMC(米連邦公開市場委員会)議事録、4月中古住宅販売などが公表されるほか、中国でも4月工業生産や小売売上高などが17日(月)にまとめて公表されます。日本国内でも1-3月期GDP速報値が18日(火)に発表される予定ですが、米金利の動きに敏感になる場面はまだまだ多そうです。

 次に、(2)についてですが、信用取引の追証など、先週の株価下落で多く発生したと思われるポジション解消の動きが影響を与える可能性があるほか、日銀のETF(上場投資信託)買いの動向も注目されそうです。

 日銀は、先週の下落局面でもETF買いを入れておらず、どういうルールで買いを入れるのかが不透明になっています。あまり可能性は高くなさそうですが、「どのくらい下げたら買うのか?」を見極めるために下値を試す展開も一応は考えておく必要があるかもしれません。