目下の焦点はテーパーリング

 目下の投資家の焦点はテーパーリングです。テーパーリングとは現在行われている債券買い入れプログラムの規模を毎月1,200億ドルという金額から、だんだん縮小することを指します。

連邦準備制度の総資産

単位:百万ドル
出所:セントルイス連銀データより筆者作成

 それは上のチャートに見られるような連邦準備制度の総資産の着実な増加ペースが鈍化し、2015年に見られたように横ばいへと遷移することを意味します。

 リーマン・ショック後の2013年5月にベン・バーナンキFRB議長が債券買い入れプログラムの縮小をちょっとほのめかした際は長期金利が上昇、株式市場もギクシャクした動きになりました。

 このように金利政策というのは「緩和→引き締め」へと転じる瞬間が、一番手綱さばきが難しいのです。

新金利政策決定の枠組み

 FRBは昨年、新金利政策決定の枠組みを打ち出しました。そこでは「インフレが2%を超えてもあわてて利上げせず、しばらく様子を見る」ことが決められました。一定期間で平均してみて、大体インフレが2%前後に収まっているのであれば、瞬間的にインフレが2%を超えたところでアタフタする必要はない……というのがその意図するところです。

 FRBがこのようなリラックスした態度に変更した理由は、マイノリティーなど社会的弱者の雇用は景気拡大の後半に大きく改善しやすく、格差縮小を目指すなら、なるべく粘って利上げしないほうがいいという考えがあるからです。FRBのジェローム・パウエル議長、ラエル・ブレイナード理事、メアリー・デイリー・サンフランシスコ連銀総裁は、特にそういう考えが強いと思います。