今年の相場は「セル・イン・メイ」に直面しやすい?

 とはいえ、好材料はこれまでの堅調相場に織り込まれ、5月以降は株価調整に巻き込まれるとの見方もあります。これは、「Sell in May and go away(株は5月に売れ)」との相場格言に象徴される季節性(アノマリー)に倣うものです。

 図表2は、1991年から2020年までの30年における米国株(NYダウ平均)と日本株(日経平均)の推移を平均化して示したもので、米国株と日本株が年初を起点にどのような軌道をたどったかを示した形状です。

 長期市場実績によると、「米国株は5月上旬まで上昇した後は夏にかけて乱高下しやすい。ただ秋ごろに底入れした後は年末にかけて年の高値を更新した」との傾向がわかります。

 もちろん、毎年必ず繰り返される事象ではありません。例えば、昨年はコロナ危機(株価は2月から3月にかけ急落した)の反動で4月から8月は株高で推移しました。相場の季節性は、世界の市場関係者やアルゴリズムが共有する「イメージ」としてとらえた方が良いかもしれません。

<図表2:過去30年の米国株と日本株の季節性(アノマリー)>

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(1991年初~2020年12月末)

 定量的な傾向として知られる「5月以降の株安」に明確な根拠はありません(だからこそアノマリーと呼ばれます)。ミューチュアルファンドやヘッジファンドなどが決算対策や節税目的で株式の持ち高を減らす時期に相当するとの説が有力です。記憶にもとづく予感の影響に過ぎないとも言われます。

 ただ、昨年11月から大きな調整を交えずに続いた米国株高が、5月以降に一服局面(株価反落や日柄調整)に直面しても不思議ではありません。

 むしろ、調整モードを適宜交えた強気相場の方が健全で長続きする可能性もあります。潜在的な株安材料として懸念されるリスク要因としては、
(1)FRB(米連邦準備制度理事会)によるテーパリング(資産購入規模の縮小)示唆
(2)インフレ加速懸念に伴う長期金利の再上昇
(3)バイデン政権が打ち出した増税計画を巡る不安
(4)人権や安全保障を巡る米国と中国の緊張激化
(5)中東地域や朝鮮半島における地政学リスク台頭

などが挙げられます。

 米国で総じて落ち着きをみせている新型コロナの感染動向が再拡大すればサプライズ要因となるかもしれません。