米国株は11月以来、6カ月連続で高値を更新

 米国市場ではS&P500指数が4月29日に4,211.47と史上最高値を更新しました。同指数は昨年11月以来6カ月連続で高値を更新したことになります。図表1は、世界の金融市場が注目しているNY(ニューヨーク)州の新型コロナウイルス感染動向を示したものです。

 ワクチン接種が進むなか新規感染者数は収束傾向にあり、NY州は移動制限や営業規制を緩和し経済活動は徐々に正常化に向かっています。

 4月29日に発表された第1Q(1-3月期)の米実質GDP(国内総生産)成長率は前期比年率で+6.4%(速報値)となり、2003年第3Q以降で2番目の高成長を記録しました。

 一方、調査会社リフィニティブによると、S&P500指数採用企業の第1Qの業績は前年同期比で約46%増益になる見通しです。これまで決算を発表した303社のうち、純利益(EPS)が事前の市場予想平均を上回った割合は約87%と好調です(4月30日)。

 FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は5月3日の講演会で「米国の景気回復は真の意味で進展しつつある」と指摘しましたが、「有色人種や低所得層の雇用情勢はいまだ厳しく景気回復は一様ではない」との判断もあらためて表明しました。

 金融当局は雇用回復を最大化する目的でゼロ金利政策を当面維持するとみられます。最近の米国株高は、低金利下で景気と業績が回復基調をたどる「適温相場の再来」と言えそうです。

<図表1:米国NY州の感染動向は収束傾向にある>

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2021年5月4日)

今年の相場は「セル・イン・メイ」に直面しやすい?

 とはいえ、好材料はこれまでの堅調相場に織り込まれ、5月以降は株価調整に巻き込まれるとの見方もあります。これは、「Sell in May and go away(株は5月に売れ)」との相場格言に象徴される季節性(アノマリー)に倣うものです。

 図表2は、1991年から2020年までの30年における米国株(NYダウ平均)と日本株(日経平均)の推移を平均化して示したもので、米国株と日本株が年初を起点にどのような軌道をたどったかを示した形状です。

 長期市場実績によると、「米国株は5月上旬まで上昇した後は夏にかけて乱高下しやすい。ただ秋ごろに底入れした後は年末にかけて年の高値を更新した」との傾向がわかります。

 もちろん、毎年必ず繰り返される事象ではありません。例えば、昨年はコロナ危機(株価は2月から3月にかけ急落した)の反動で4月から8月は株高で推移しました。相場の季節性は、世界の市場関係者やアルゴリズムが共有する「イメージ」としてとらえた方が良いかもしれません。

<図表2:過去30年の米国株と日本株の季節性(アノマリー)>

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(1991年初~2020年12月末)

 定量的な傾向として知られる「5月以降の株安」に明確な根拠はありません(だからこそアノマリーと呼ばれます)。ミューチュアルファンドやヘッジファンドなどが決算対策や節税目的で株式の持ち高を減らす時期に相当するとの説が有力です。記憶にもとづく予感の影響に過ぎないとも言われます。

 ただ、昨年11月から大きな調整を交えずに続いた米国株高が、5月以降に一服局面(株価反落や日柄調整)に直面しても不思議ではありません。

 むしろ、調整モードを適宜交えた強気相場の方が健全で長続きする可能性もあります。潜在的な株安材料として懸念されるリスク要因としては、
(1)FRB(米連邦準備制度理事会)によるテーパリング(資産購入規模の縮小)示唆
(2)インフレ加速懸念に伴う長期金利の再上昇
(3)バイデン政権が打ち出した増税計画を巡る不安
(4)人権や安全保障を巡る米国と中国の緊張激化
(5)中東地域や朝鮮半島における地政学リスク台頭

などが挙げられます。

 米国で総じて落ち着きをみせている新型コロナの感染動向が再拡大すればサプライズ要因となるかもしれません。

100円から投資できる米国株ファンドで「押し目買い」を実践

 MPT(現代投資理論)によると、「相場変動はランダムウォーク(千鳥足)に近く事前に予見することは不可能」とされます。実際、マーケット・タイミング(短期売買)は「言うは易く行うは難(かた)し」です。

 一般の個人投資家は、「米国株式が長期・分散・積立投資に報いてきた市場」である実績にまずは注目したいと思います。

 図表3は、約30年前(1991年初)を起点に米国株式全体(S&P500指数/配当込み/円換算)に3万円ずつ定時定額投資を続けた場合の投資成果を検証したものです。

 相場に大小の乱高下はありましたが、ドルコスト平均法(株価が下落すると購入口数が増加する)と複利運用(雪だるま効果)で累計投資口数が着実に増加した結果、長期では運用総資産(時価)が大きく膨らんできました。

 具体的には、2021年4月末時点の運用資産額は時価で約6,760万円となり、累計投資元本額(1,092万円=3万円×364回)の約6.2倍に膨らんできた市場実績がわかります。

<図表3:米国株の「長期・分散・積立投資」実績を検証する>

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(1991年初~2021年4月末)

 高値圏で推移してきた米国株が5月以降に調整局面を迎える可能性は否定できません。株価が下落する際には「Stay Invested」(投資を続ける)との方針を重視したいと思います。

iDeCoやつみたてNISAで長期分散投資するなら?

 ご参考までに、一般の個人投資家が少額(100円以上1円単位)から投資できる追加型投資信託をご紹介します。図表4は、「楽天・全米株式インデックス・ファンド」の基準価額と運用純資産の推移を示したものです。

 米国籍ETF(上場投資信託)として著名な「バンガード・トータル・ストック・マーケットETF」(ティッカー:VTI)に連動するように運用されている投資信託で、米国市場の大型株から小型株までを網羅する「CRSP USトータル・マーケット・インデックス(約3,800銘柄で構成される時価総額加重平均指数)」の円換算パフォーマンスに連動を目指すインデックス・ファンドです。

同投資信託は、「iDeCo」(イデコ:個人型確定拠出年金)や「つみたてNISA」(ニーサ:積み立て型の少額投資非課税制度)に活用できるファンドとして注目されています。

 基準価額の1年前比騰落率は+52.6%で、年初来騰落率は+19.4%。定時定額投資を中心とする長期投資資金の流入が続いており、運用純資産は約2,589億円に増加しています(4月末)。

 米国株が下落する場面では、米国市場に幅広く長期分散投資できるインデックス・ファンドを活用した「押し目買い」や「積み増し買い」を検討したいと思います。

<図表4:「100円」から投資できる米国株式インデックス・ファンド(参考例)>

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2018年初~2021年4月末)

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