中国『一帯一路』は進行中。イラン大統領選挙、米国のアフガン撤退が拍車をかける

 状況を複雑にしているのが、中国の存在と今年の複数の重要イベントです。中国の習近平国家主席が2013年に提唱した『一帯一路』構想では、イランは非常に重要な位置にあります。6月のイラン大統領選挙で反米色が強い保守強硬派が勝利し、イランの中国傾斜が強まるきっかけができ、かつ、9月の米兵のアフガニスタンからの撤退が予定どおり行われれば、『一帯一路』構想における中国・中央アジア・西アジア回廊の完成はさらに現実的になるでしょう。(下図参照)

図:一帯一路構想(六大回廊)

出所:各種情報源より筆者作成

 現在イランの一般大衆の間では、核合意を離脱し、独自に制裁を課している米国への反発心が強まっています。また、合意を結んだ当事者であるロウハニ大統領への風当たりが強くなっています。このため、ロウハニ大統領の再選は厳しく、イラン社会がどんどんと保守的で強硬的になるとの指摘もあります。

 9月の米兵のアフガニスタン撤退が予定通り行われれば、さらにイランとイラン周辺から、米国色が小さくなることが予想されます。そしてそこに付け入るように、さらに存在感を増すのが、中国です。イランとアフガニスタン一帯が中国の息がかかった地域になれば、『一帯一路』構想はさらに現実的になります。

 また、報道では、中国はすでに、イランだけでなく、アラブ首長国連邦(UAE)、オマーンなどといった、ペルシャ湾やオマーン湾という原油供給の大動脈に沿った国々の港湾施設の利用権を有しているとされています。「中東の中国傾斜」はじわじわと進行しており、今年6月のイラン大統領選挙と9月の米兵のアフガニスタン撤退が、それに拍車をかける可能性があります。

 さらに、中国に傾斜したイランが核兵器を持った場合、イラン、その西にイスラエル、東にパキスタン、インド、そして中国、北にロシアと、核保有国の密集度が上昇することになります。現在、核保有国に囲まれていることが、イランを核保有に走らせる一因になっていると考えられますが、パワーバランスを均衡させるために新たなパワーを持つという考え方は、世界全体でみれば決して好ましいことではありません。

図:中東の中国傾斜が進んだ場合の筆者のイメージ

出所:筆者作成