4月に注目したい新興株の動き

 4月は新年度、ということで、日本の機関投資家にとっての新たな1年が始まる月なわけですが…そんなことはマザーズのメインプレーヤーである個人投資家には関係ないことですよね。株高地合いは保たれるか? バリュー株とグロース株どっちが優位の地合いになるか? 引き続き、はっきりしない株式市場と、その中にあって今年に入って最も出遅れているマザーズ(3月末時点でマザーズ指数だけ年初来マイナス)の浮上も期待したい…そんな4月でしょうか。

 ひとまず、年度替わり直後の段階では、地合いは堅調です。米国株市場ではVIX指数が昨年のコロナショック前、2020年2月21以来となる17ポイント台に低下しています。S&P500やNYダウは史上最高値を更新中で、米国株に逆らって弱気になるのも分が悪そう…そんな雰囲気。日米とも薄商いとなっている点をどう見るか? は意見が分かれそうですが、現状は高値圏で小康状態。この状況で、日本の新興株市場だけ崩れると予想するのも無理があります。

 年初来のパフォーマンスが悪いマザーズ指数。1~3月の期間騰落率では、日経平均株価+7.1%、東証2部指数+13.5%、日経ジャスダック平均+5.8%に対し、東証マザーズ指数は▲1.5%。米長期金利の上昇が加速、グロース株(バリュエーションの高い株)の塊である東証マザーズ市場には逆風でした。加えてマザーズでいえば、IPOのセカンダリー市場が不調だったことも挙げられます。IPO直後に参戦する投機勢は多いのですが、初値後に急落する銘柄が続出しました。買いエネルギーが極端にかかった銘柄で、短期集中的に評価損益が悪化。これがセンチメント悪化につながったほか、マザーズ指数の構成銘柄である既存のマザーズ銘柄の流動性低下をもたらしました。

 IPOでいえば、4月は例年IPOが少なくなる時期。ですが、今年は12社(うちマザーズ5社)が予定されています。緊急事態宣言が再発動した影響で、3月上場を目指していた企業の審査や手続きの遅れが理由とも言われています。そういう意味では、IPOへの資金分散が続き、既存のマザーズ銘柄の流動性が高まりにくいことも予想されます。ここは、2月や3月と同様。

 また、地合い的には悪くないものの、新型コロナウイルス後の“反動”をどう見るか? 市場の反応を見極める必要があるタイミングに差し掛かってもいます。昨年の3月、コロナ禍で日本国内でも外出自粛ムードが広がりました。そして昨年4月7日に最初の緊急事態宣言が発動され、街から人が消えました。あれから1年…4月に入って月次売上高(3月分)を発表している小売企業では、前年落ち込んだ反動から「前年同月比」で大きな伸び率が出ています。これは予想されたことですが、好意的に株価が反応しています。

 その逆の反動もあります。コロナ禍で急激に業績を伸ばした企業、いわゆるウィズコロナ株に関しては、「急激な伸び率鈍化」もしくは「伸び率マイナス」が出てしまうことになります。例えば、ジャスダックに上場するホームセンターのセキチューは4月1日、今期見通しを開示。前期こそ、コロナ禍で衛生用品や巣ごもり関連用品の特需もあり、営業利益が2.1倍増に膨らみました。ただ、今期の営業利益予想は前期比80%減。これを受け、翌日の株価は14%安となりました。反動が出ることは分かっていても、織り込み済み的な反応にはなりませんでした。

 5月の決算発表が近づくにつれ、コロナ禍に特需が発生したマザーズのウィズコロナ株に対する業績リスクが警戒される恐れがある点は注意。DX関連にしてもEC関連にしても、会員数などの急激な増加はコロナ禍に発生したわけで…。マザーズの決算発表でいえば、13日にマネーフォワード、14日にロコンド、グッドパッチ、20日にマクアケ、30日にすららネットなどが予定。終わった期の高い伸び率は織り込んでいるとして、今後の伸び率鈍化は織り込んでいるのか?初期反応を見ながら、市場の先取り度合いを計ることが最重要といえます。