水素エネルギーは大きな成長テーマだが、今は利益が出ない

 2021年は、水素エネルギーが、第四次産業革命(ITによる技術革新)とともに、株式市場で注目される重要テーマになると思います。そのテーマに乗る株を買ったらもうかりそうに思うかもしれませんが、それがそう簡単ではありません。

「水素エネルギー」は、つき合うのがとても難しいテーマです。なぜならば、今はまだ先行投資期だからです。将来のために、たくさんの企業が赤字でも歯をくいしばって、水素事業に投資しているところなのです。利益を稼ぐビジネスになるのに、まだ5年、10年とかかるかもしれません。あるいはもっと長くかかるかもしれません。

 もし、水素事業しかやっていない上場企業があれば恐らく赤字です。人類にとって重要な成長テーマにかかわる企業だからといって、赤字企業に投資するのは、勇気がいります。

 以下、参考までに、私が作った成長企業の株価変動イメージ図をご覧ください。

小型成長企業の株価変動パターン(イメージ図)

出所:筆者作成

上のグラフでは、ベンチャー成長株の株価変動イメージを、3つの時期に分けて描きました。

  1. 黎明期:成長期待があるが、利益が出ない(赤字)時期
  2. 急成長期:利益が大きく成長する時期
  3. 成熟期:最高益更新が続くものの、増益率が大幅に鈍化する時期

 このグラフは、成長株の成功事例をイメージして描きました。黎明期から成熟期まで長く持っていれば、高いリターンが得られます。ただし、それでも、投資タイミングが悪いと、短期的に大きな損失をこうむることがあります。それが、グラフで赤い矢印をつけたところです。短期的に株が急騰した直後に買って運が悪いと、黎明期の赤印をつけたところで買ってすぐに急落の憂き目にあいます。

 水素事業は今、黎明期です。たびたび株価が熱狂的に買い上げられますが、熱気が冷めると、赤字事業なので株価は暴落します。それを何回も繰り返します。

 このパターンは、バイオやIT関連株でもよく見られます。赤字のまま上場している東証マザーズの成長株によく見られるパターンです。「大きな夢があって熱狂的に買われる、熱気が冷めて暴落する」を繰り返す可能性があります。

 ここでは、黎明期(赤字)を5年としていますが、水素ビジネスはもっと長いかもしれません。たとえば、トヨタ自動車(7203)が開発した、水素エネルギーで走る燃料電池車「MIRAI」。EV(電気自動車)とともに、将来、世界中のガソリン車を代替するかもしれない、重要な戦略車です。それでも、トヨタ自動車にとってMIRAIが黒字化するのには、まだ10年以上かかるかもしれません。