良い会社の株なら、必ず上がる?

 さて、良い会社の株は、ほとんどの場合、「買い」だと書きましたが、稀(まれ)に良い会社と、良い投資機会が一致しないときがあります。これはマーケットで起こっていることが、現実のビジネス社会で起きていることと、時としてズレることから生じる問題です。これを説明するためには、まず株式市場では、どのように売り買いが成立するのか? ということから掘り起こす必要があります。

 一般に、株式は取引所で取引されます。最近は、そうではないケースがどんどん増えているのですが、まず基本を押さえるという意味で、ここではニューヨーク証券取引所(NYSE)の例で説明します。

 皆さんがテレビのニュースで見かける取引所の内部の様子は、立会場と呼ばれる場所です。

 立会場には世界中から「この株を売りたい」「あの株を買ってくれ」という注文が集まってきます。この売りのニーズと買いのニーズをマッチさせるのが、取引所なのです。

株価が変動するメカニズム

 さて、売買が成立するためには、ある値段で「売りたい」という人の株数と、同じ値段で「買いたい」という人の株数が同じである必要があります。よく「株式市場では、売り手の株数と買い手の株数は常に同じだ」ということが言われるのは、このためです。

 ただ、実際には、ある値段でピッタリ売り株数と買い株数が一致することは稀で、買い手の方が売り手より多い、逆に売り手の方が買い手の方より多いということは常に起こっています。

 もし、買い手がたくさんいて売り手が少なければ、「どうしてもこの株を買いたい」と思う投資家は、他の買い手より自分の方が先に、確実にその株を手に入れるため、他の投資家より高い値段を積極的に提示する必要があります。

 こういう急ぐ投資家が値段を吊り上げるから、株価が上がるのです。別の言い方をすれば、買い手の方が売り手より多いという、ミスマッチを解消するためには、値段を上げる必要があるのです。

 次に「売りたい」という人が多い場合は、上の説明の全く逆が起こります。すなわち、一刻も早くこの株を処分したいと思う投資家は、他の売り手より不利な値段、つまり安い値段でも構わないからこの株を売ることに同意するわけです。これが株価の下がるメカニズムです。