「終了」しかかったスタバがカムバックした理由
スターバックスは世界で愛されているブランドですが、2008年から2009年にかけて「これは、やばい……」という危機に直面しました。急速に拡大しすぎた反動で、既存店売上比較が低迷し始めたのです。
既存店売上比較とは、開店してから1年以上経過しているお店の売上高が、昨年に比べてどうだったか? という尺度です。これは小売店やレストランの経営の健全性を測る重要な指標です。
図:スターバックスの既存店売上比較
これは突然、成功が繰り返し再現できなくなってしまったケースとして、とても興味をそそる例です。
スターバックスの既存店売上比較がどんどん悪化する様子を見て「そろそろスタバも終了だな」という陰口を叩く業界関係者が出ました。
投資家は、連日安値を更新する株価に神経をすり減らしました。
図:スターバックスの株価(引け値ベース)
当時経営の第一線を退いていたハワード・シュルツは、急いでCEO(最高経営責任者)に復帰し、経営立て直しの糸口を模索するためスターバックスの店舗を片っ端から視察して回り、(どこで間違えてしまったのだろう?)と思案します。
その時、「ちょっと待て、コーヒー店なのに、店内にコーヒーの香りが充満してないじゃないか!」ということに気がつきます。
当時のスターバックスは、効率を追求するあまり、コーヒーの香りすら立たないマシンを導入してしまっていたのです。いつの間にかスターバックスは「コーヒーを楽しむところ」から、「効率よく注文をさばく組立ライン」のような無機質な存在に変わってしまったのです。
そこでシュルツCEOは「コーヒーのロマンを取り戻せ!」と大号令をかけて、わずか2年足らずで、スターバックスの業績を立て直します。
皆さんは2008年から2009年にかけて、スターバックスを利用していましたか? ひょっとして、スターバックスに一時飽きていたということはありませんか? もしそうだとすれば、それはスターバックスがスランプに陥っていた時だったからかもしれません。
繰り返しになりますが、株で大切なのは、そういう何でもない日常から得られる洞察なのです。