いま政府で議論されていることとは

 このように、贈与税と相続税の税率構造の違いから、生前に低い税率の範囲内で生前贈与を行い、「贈与税+相続税」のトータルでの税額を低く抑えようという動きは、相続税の節税対策として広く行われています。

 しかし、政府はこのことを快く思っていないようです。なぜなら、この節税対策は、財産を多く持っている人ほど効果が絶大になるからです。これにより、財産を持っている人とそうでない人との格差が不当に拡大することを防ぎたいというのが政府の考えなのです。

 そのため、すでに贈与税の課税の仕方を変えようとする動きが出ています。まだ具体的にどうなるかは不明ですが、おそらく相続時精算課税のような方式にして、生前に贈与しても相続時に課税しても、同じ税率になるような仕組みになると思われます。

 つまり、制度が改正された後は、生前贈与を行っても相続税の節税をすることができなくなってしまうのです。

いまからできる対策は?

 この贈与税の課税体系の変更は、数年後に行われるのではないかといわれています。したがって、まだ時間的猶予はあります。いまからできる対策は、課税体系の変更がなされる前に生前贈与を進めておくということです。

 もし5年後に制度改正が行われると想定すれば、できるだけ早期から子どもや孫に贈与を積極的に行うことが望まれます。

 もし40%の相続税率がかかる財産を持っている人が、子ども2人、孫2人に年間500万円の贈与を5年間行えば、次の相続税節税効果が期待できます。

500万円×4人×5年×(40%-9.7%)=3,030万円

 制度改正は5年後ではなく3年後かもしれません。現状把握、およびシミュレーションをして、できる限り早期に、かつ節税効果が最大限期待できる額の贈与を行うのが理想です。