米国と中国の回復が前提。ここは強気かも

 次に、具体的な経済の動きを見ていきましょう。まずは、海外要因です。

 1月にIMF(国際通貨基金)のWEO(World Economic Outlook)が公表されました。先進国の実質GDP成長率の推計・予測を見ると、2020年▲4.9%、2021年+4.3%、2022年+3.1%。コロナショック前の水準に戻るのは、2022年入り後になると見込んでいます。

 目を引くのは、米国の強さ。2020年▲3.4%、2021年+5.1%、2022年+2.5%という予測なので、2021年中に2019年の水準を回復し、2022年からは潜在成長率相当の通常の経済に戻ると見込んでいることになります。

 3月3日に公表されたベージュブックでは、「経済活動は大半の地区で1月から2月半ばにかけて控えめに拡大」と指摘する一方、「大半の企業が6~12カ月先について前向きな見方」と述べられています。

 新型コロナウイルス変異株の感染拡大やワクチン接種の進展具合といった、不確実さはありますが、バイデン政権の1兆9,000億ドル規模の経済支援策が導入される見込みが高くなったことで、米国経済への強気な見方が増えています。

 むしろ、想定よりも経済の回復ペースが速いことによるインフレ懸念やFRB(米連邦準備制度理事会)による金融政策のスタンスが変わるのではないかという、楽観シナリオゆえの懸念が出始めています。このところの米国の長期金利の上昇も、米国経済の強気見通しの裏返しという側面があります。

 もう一つの世界経済のけん引役・中国のGDP成長率は、2020年+2.3%、2021年+8.1%、2022年+5.6%と予測しています。まだ、一人当たりの所得水準が低いので、新興国扱いですが、GDP世界第2位の経済がどの程度回復するかで、米国と同様に大きな影響があります。

 2020年中にコロナ対策を確立したことでプラス成長になりました。2021年の経済成長率は+8.1%と高い予測ですが、まだまだ先進国に比べれば伸びしろがあり、潜在成長率が高いので、2020年の出遅れ分も取り返す形で高い成長率が見込まれています。2022年は巡航速度に移行するというイメージです。

 日本経済にとっても、世界経済にとっても、米国と中国の経済が順調に回復することは、経済の安定に欠かせません。輸出先としてだけではなく、輸入を通じて、国内の製造や小売が通常の活動ができます。

 IMFのWEOでは、日本のGDP成長率を2020年▲5.1%、2021年+3.1%、2022年+2.4%と予測しています(1月公表なので、内閣府が2月に公表した1次速報の2020年▲4.8%とは0.3%ポイントの乖離があります)。米国・中国の順調な回復を前提にしても、ゲタを考慮すると、2021年中は+1%成長に満たない緩慢な回復を想定していることになります。