日本経済は下振れリスクに注意。企業債務に黄信号

 日本の国内事情を考えていきましょう。現状のワクチン接種シナリオには不確実な要素が多く、特に、ワクチン接種に必要な医師や看護師の確保に苦慮すると見られているため、コロナを気にせず活動できるようになるのは、年内にはほぼ無理と見て良さそうです。

 都道府県ごとに日々の新型コロナウイルスの感染者数を見ると、コロナウイルス対策にほぼ成功しているように見える県もありますが、大都市圏の経済活動と無縁ではないし、ニュースなどを通じて、大都市圏の感染状況に行動が左右される面もあります。地方経済だけが、コロナ前に戻るということにもならなそうです。

 また、7月の東京都議選、10月に任期満了を迎える衆議院選挙、開催可否・開催方式がいまだ決まらない東京五輪・パラリンピックといったイベントを踏まえると、単純に感染状況を見ながら経済とバランスを取るという政策になるのかも不透明です。

 そうした状況を考慮すると、2020年10-12月を発射台にして、それほど経済活動が盛り上がらないという状況を標準シナリオとして良さそうです。また、ワクチン接種が急速に進むとは考えにくい以上、上振れる余地はあまりなさそうです。

 一方、下振れリスクについては、注意が必要です。

 ひとつは、企業債務です。コロナ対応の制度融資もあって、2020年の倒産件数は2019年よりも減ったのですが、3月2日に公表された財務省「法人企業統計調査(四半期別調査)」によると、2020年10-12月期の短期借入金は前年同期比で+9.7%の増加、長期借入金は+8.6%増加しています。

 景気が回復して、キャッシュフローに余裕が出てきても、借金の返済を優先して、設備投資や人材投資そして人件費が抑え気味になると考えられます。短期的には需要が伸び悩むし、長期的には生産能力の低下を通じて、成長に下押し圧力がかかります。

 また、業績回復が見込めない企業、特に、飲食業や宿泊業の場合、追加融資を見込めず資金繰りが厳しくなれば、倒産・廃業することになります。

 昨年は全業種計の倒産件数は減ったものの、帝国データバンクの倒産件数の集計によると、宿泊業では大幅増加、飲食店では過去最多になりました。経済・社会活動が正常化するまで、飲食業や宿泊業は厳しい状況が続きますし、取引先への影響もあります。

 もうひとつは、雇用・賃金の動向です。企業収益から考えると、2021年の夏のボーナス、冬のボーナスともに大幅減が見込まれます。経団連によると2020年冬のボーナスは前年比▲9.02%だったことから、今年のボーナスもそれに近い減少になりそうです。

 雇用調整助成金の特例措置などがうまく機能したことで、実体経済の落ち込みに比べれば、失業率は低く抑えられてきました。総務省統計局「労働力調査」によると、2021年1月の完全失業率は2.9%。リーマンショックによる景気悪化で、2009年7月に5.5%にまで失業率が上昇したことを考えると、雲泥の差です。

 裏を返せば、失業率が減少することによる経済の上振れがあまり期待できない一方、企業の倒産動向や雇用調整助成金の特例措置の延長期限を考えると、今後、失業率が上昇する可能性も視野に入れる必要がありそうです。

 米国の株高につられる形で日本の株価も上昇してきましたが、実体経済を見ると、状況は大きく異なります。最悪期は脱したように見えるものの、まだまだ予断を許さない日本経済。見かけの数字に飛びつかず、さまざまな角度からリスクを点検する局面です。