純金積立で成功したければ、絶えず6つのテーマの現在を俯瞰せよ

図:金市場を取り巻く6つのテーマ(○は上昇要因、△は下落要因)

出所:筆者作成

 長期的な取り組みである純金積立を行うにあたり、長期的な価格動向に影響を及ぼす材料に注目することが不可欠です。以下の中長期に挙げた、(4)中国インドの宝飾需要、(5)中央銀行、(6)鉱山会社が、それにあたります。

 これまで、合計5つを金市場の動向を考える上で重要なテーマと考えてきましたが、鉱山会社の動向が、長期的視点で、今後の金価格に与える影響度が増すことを想定し、(6)を追加しました。

(4)は、ほぼいつの時代も存在するテーマです。この1世紀で何度もインフレを(中にはハイパーがつくインフレもあり)経験した中国では、自国の通貨よりも金(ゴールド)を選好する人が少なくないといいます。また、数千年の歴史の中で、宝飾品として重用されてきたこともあり、根強い金への信仰めいたものがあります。

 インドも同様で、婚礼の際、父親が娘に何かあった時のお守りとして、金の宝飾品を渡す文化があります。中国もインドも、民族的、文化的な背景に裏打ちされ、歴史的に、個人起因の実需が一定量存在します。

 これらの需要の増減のきっかけは、景気の良し悪しよりも、価格の動向と考えられます。個人が主体であることから、価格が安い時に買われやすい、傾向があります。

(5)は、このおよそ10年間、全体的に“買い手”という認識が定着しつつあるテーマです。中央銀行によっては、急場の用立てのため、あるいは自国の通貨の価値が不安定であるため、金を売却して当座の資金を調達する場合があります。このため、すべての中央銀行たちが金の保有高を積み上げているわけではありません。

 とはいえ、このおよそ10年間、各国の中央銀行による売却と購入の合計は、全体的には購入の方が多い状態が続いています(年ベース)。

 雇用や金利情勢の安定化は、銀行の銀行と呼ばれる中央銀行の重要な役割の一つです。世界は全体的に見れば、まだまだ、新型コロナの感染拡大で負ったダメージが癒えたとは言えません。収束までに、今後も膨大な時間とコストが掛かると言われているため、(特に新興国の)中央銀行たちの金の保有高の積み上げは、今後も長期的に続く可能性があります。

(6)については、価格動向次第で状況が異なりますが、事象の時間軸としては長期に当てはまります。生産コストが変わらないと仮定すれば、金(ゴールド)相場が安くなれば、生産量が減少し(生産意欲の減退)、相場が高くなれば増加する(生産意欲の増大)とみられます。

 このように考えれば、長期のテーマとしたもののうち、(4)と(6)は、金価格が下落した場合の長期的な価格の下支え要因になり得、(5)は価格というよりも当該国を取り巻く環境の悪化度合いに合わせて購入量が増減する、と言えそうです。

 また、短中期的なテーマである(1)から(3)は、数秒から数カ月(数年にわたる金融緩和や株高が起きた場合は数年のケースも)の期間で、断続的に“影響力を相殺しながら”金相場を動かしています。

 2月下旬に“株安・金安”が起きたのは、株安という“代替資産”の側面から発生した上昇圧力を相殺して余りある、金利上昇という“代替通貨”の側面から発生した下落圧力が発生したため、と解釈できます。複数の材料を俯瞰することで、単一の材料で説明することを試みる過去の常識で説明できない事象(株安・金安)を説明できるようになります。

 長期投資を前提とした純金積立においては、短中期の価格変動を短中期の3つのテーマで解釈して“感情の浮き沈み”という敵をあしらいながら、長期の3つのテーマで大局観を見定め続けることが、おおまかな戦略なのだと、筆者は考えています。

 金相場の値動きにおいて、株との関係だけ、ドルとの関係だけなどといった、材料を点でみる、過去の考え方だけでは説明がつかないケースが頻発する時代だからこそ、この戦略は重要と言えます。

 次回以降、「アドラー心理学に学ぶ、純金積立を成功させるための秘訣[2]」として、具体的な純金積立の投資戦略について書きます。

[参考]楽天証券の純金積立の紹介

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