毎週金曜日夕方掲載

本レポートに掲載した銘柄:アップル(AAPL、NASDAQ)アマゾン・ドット・コム(AMZN、NASDAQ)マイクロソフト(MSFT、NASDAQ)

アップル

1.2021年9月期1Qは、21.4%増収、31.2%営業増益

 アップル(ティッカーシンボルはAAPL、NASDAQ上場)の2021年9月期1Q(2020年10-12月期)は、売上高1,114億3,900万ドル(前年比21.4%増)、営業利益335億3,400万ドル(同31.2%増)となりました。業績好調でした。

表1 アップルの業績

株価 129.71ドル(2021年2月18日)
時価総額 2,196,639百万ドル(2021年2月18日)
発行済株数 16,935百万株
単位:百万ドル、%、倍
出所:会社資料より楽天証券作成。
注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
注2:発行済株数は完全希薄化前(Basic)。
注3:配当は申告日ベース。2020年8月24日に1対4の株式分割を行ったっため、これによる補正を行った。

2.2021年9月期1Qは、全製品・サービスカテゴリーが二ケタ増収となった

 今1Q(2020年10-12月期)を製品・サービスカテゴリー別に見ると、iPhone、Mac、iPad、ウェアラブルとホーム&アクセサリー、サービスの全カテゴリーが前年比二ケタ増収となりました。

 まず、2020年10~11月に新型iPhone「iPhone12」シリーズを発売したiPhoneカテゴリー(アップルの製品・サービスカテゴリーの中で最も売上高が大きい)は、売上高655億9,700万ドル(前年比17.2%増)となりました。2018年1-3月期から2020年7-9月期まで低迷が続いていましたが、回復しました。過去3年間は、端末価格の上昇が続き高くなりすぎたため、新規購入や買い替えが手控えられてきたと思われます。しかし、2020年10月以降は、「12」シリーズが5G対応になったこと、普及価格帯の「12」シリーズを出したことが人気回復に貢献したと思われます。ただし、実際の売れ行きを見ると高性能で高価格帯の「Pro」「Pro Max」も好調でした。

 アップルによれば、他社製スマホからの乗り換え、iPhone旧機種からの買い替えがともに増加しました。特に、今1Qは買い替えが過去最高となりました。

 iPhone売上高が回復に転じたことは、全体の業績に大きく貢献したと思われます。

 またiPadは、売上高84億3,500万ドル(同41.1%増)と好調でした。調査会社のIDCによればiPadの2020年10-12月期出荷台数は1,900万台(同19.5%増)、ここから出荷単価を計算すると443.9ドル(2019年10-12月期375.9ドル)となり前年比18.1%上昇しました。2020年4-6月期(2020年9月期3Q)から、世界的なテレワークと在宅学習の普及によって販売台数が増え一時的に出荷単価が上昇し、これが2020年4-6月期以降の売上増加に結び付いたと思われます。

 今後重要になってくるMacは、売上高86億7,500万ドル(同21.2%増)と順調に伸びました。IDCによれば、2020年10-12月期のMac出荷台数は734.9万台(同49.2%増)と大幅に伸びました。2020年4-6月期からテレワークの普及に伴って販売が好調ですが、更に弾みがつきました。2020年11月17日にアップルが自社開発してTSMCが生産している最新鋭の5ナノSoC(CPU、GPUなどを一つのシリコン基板上に置いたもの)「M1」をMacBook Air、MacBook Pro、Mac miniの3機種に搭載して発売したところ、ユーザーから高評価を得て販売好調のもようです。5ナノCPU、GPU搭載のパソコンはこれが世界最初です。価格も最低価格10万4,800円(MacBook Airの7コアGPUタイプ、13.3インチ)と高性能PCとしては手頃になっています。従来からWindowsPCを使っていた層もM1に引かれてMacを購入する動きがでてきた可能性があります。会社側では2020年10-12月期にMacとiPadを購入した人の半数が新規購入者だったとしています。

 このほか、ウェアラブルとホーム&アクセサリーはアップルウォッチ、アクセサリー類、AirPodsの貢献で、サービスは、アップストア、広告、クラウドサービス、アップルミュージックの貢献で各々好調でした。

 地域別売上高を見ると、各地域とも順調でした。最大地域の南北アメリカは売上高463億1,000万ドル(同11.9%増)でした。また、中国が売上高213億1,300万ドル(同57.0%増)と大幅増でしたが、これはiPhone12シリーズが5G対応になったことによると思われます。日本も82億8,500万ドル(同33.1%増)と大幅に伸びました。

表2 アップル:カテゴリー別売上高

単位:100万ドル
出所:会社資料より楽天証券作成

表3 アップル:地域別売上高

単位:100万ドル
出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ1 iPhone出荷台数

単位:万台、四半期ベース
出所:アップル、IDC。
注:アップルは2018年7-9月期まで。2018年1-3月以降はIDCによる

グラフ2 iPhone平均出荷単価

単位:ドル/台
出所:会社資料、IDCプレスリリースを元に楽天証券作成。
注:計算基礎となった2018年7-9月期までの販売台数は会社公表、販売金額にはその他サービスを含む。2018年10-12月期以降は、販売金額は会社公表でその他サービスを含まない。出荷台数はIDCプレスリリース

グラフ3 Mac出荷台数

単位:万台
出所:アップル資料、IDCプレスリリースより楽天証券作成

グラフ4 Mac出荷単価

単位:ドル/台
出所:会社資料、IDCプレスリリースを元に楽天証券作成。
注:計算基礎となった2018年7-9月期までの販売台数は会社公表、販売金額にはその他サービスを含む。2018年10-12月期以降は、販売金額は会社公表でその他サービスを含まない。出荷台数はIDCプレスリリース

3.2021年9月期、2022年9月期と業績好調が期待できよう

 アップルは2021年1-3月期(2021年9月期2Q)の業績ガイダンスを示していませんが、2020年10-12月期の業績から見て、2021年1-3月期も業績は順調な伸びが期待できます。iPhone12シリーズの中でも高価格帯のPro、Pro MaxとMI搭載Macの発売が昨年11月だったため、これらが業績にフルに寄与するのが2021年1-3月期からになるためです。

 iPhoneとMacは今期だけでなく、来期2022年9月期の業績にとっても重要です。iPhone12シリーズには5Gモデムとしてクアルコム製「X55」が搭載されているもようですが、これはiPhone12シリーズのチップセットのように5ナノのデザインルールではなく7ナノで生産されたものです。最近型の「X60」(5ナノで生産)は2021年秋発売の新型iPhoneに搭載されると思われます。続く2022年秋の新型iPhoneのチップセットは3ナノとなる予定ですが、5Gモデルがどうなるのかまだ不明です。つまり、iPhoneの5G関連性能の向上は2020~2022年まで少なくとも3年間続くと予想されます。これによって買い替え需要、乗り換え需要の両方を継続的に喚起することが出来ると思われます。

 Macについては、アップルは2020年11月から2年かけて現在Macに搭載されているインテル製CPUをM1に置き換えていく予定です。これからはMacの中でも高価格の上位機種にM1を搭載し発売することになるため、人気が出れば業績への貢献も大きくなると思われます。

 2020年10-12月期の業績と今後の良好な見通しを反映して、楽天証券ではアップルの2021年9月期、2022年9月期業績予想を上方修正します。2021年9月期は前回の売上高3,200億ドル(前年比16.6%増)、営業利益830億ドル(同25.2%増)を売上高3,300億ドル(同20.2%増)、営業利益880億ドル(同32.8%増)へ、2022年9月期は同じく売上高3,700億ドル(同15.6%増)、営業利益1,020億ドル(同22.9%増)を売上高3,950億ドル(同19.7%増)、営業利益1,120億ドル(同27.3%増)へ上方修正します。

 引き続き業績好調が予想されます。

表4 アップル:カテゴリー別売上高:年度ベース

単位:100万ドル、%
出所:会社資料より楽天証券作成

4.アップル、EVに参入か

 昨年12月21日付けでロイター通信は、アップルが2024年の生産開始を目指しEV(電気自動車)の開発(車載電池技術の開発)に取り組んでいると報じました。その後、今年2月には、韓国、日本の自動車メーカーとの間で生産委託の交渉が進んでいると報道されました。

 アップルはEV参入に関して何も発表していません。ただし、仮にアップルがEVに参入するならば、中長期の業績と株価にプラスの効果が期待できると思われます。

5.今後6~12カ月間の目標株価は、前回の165ドルを維持する

 今後6~12カ月間の目標株価は、前回の165ドルを維持します。楽天証券の2022年9月期予想EPS 5.73ドルに、保守的に今期2021年9月期の予想PER水準である25~30倍を当てはめました。

 引き続き中長期で投資妙味を感じます。