TOB合戦?すぐに市場で売却しない方がよいかもしれない理由
ただし、市場で売却する際に1つ押さえておきたい点があります。それは、公開買付けによる買付価格がつり上がる可能性があるということです。
典型的なケースが、いわゆる「TOB合戦」と呼ばれるものです。ある会社がTOBにより買収しようと公開買付けを発表した後、別の会社が「我が社もぜひ買収したい」と名乗りを上げ、先に公開買付けを発表した会社よりも高い買付価格を提示することが時々あります。
こうなると、もともとの買付価格がさらにつり上がることになるので、その前に市場で売却してしまうとせっかくの利益を得られなくなってしまうのです。
直近では、島忠(8184)のケースが記憶に新しいです。
最初は、DCMホールディングス(3050)が公開買付けによるTOBを表明しました。買付価格は4,200円と発表しました。
ところがその後ニトリホールディングス(9843)が公開買付けによるTOBを表明、買付価格をDCMホールディングスが提示した金額より高い5,500円としました。
その結果、もともとDCMホールディングスが提示した買付価格にさや寄せしていた株価は、ニトリホールディングスが提示した高い買付価格にさや寄せするためにさらに大きく上昇することになったのです。
・島忠(8184)の日足チャート(2020年9月1日~2021年2月15日)
このように、時にはTOB合戦によって買付価格がつり上がる可能性を考慮すると、買付価格近辺まで株価が上昇した後すぐ売ってしまうよりも、しばらく売らずに様子を見ておくのが得策ではないかと感じますし、筆者もそのようにしています。
無論、TOB合戦が起こらず、さらには公開買付けの中止などのアクシデントにより株価が下がってしまうリスクもゼロではありませんから、買付価格近辺で早めに確実に売っておこう、という考え方も間違ってはいないと思います。
実は今回ご紹介したTOBの話は、代表的な2つのケースのうちの1つです。もう1つのケースに当てはまる場合は、少し話が変わってきます。それについては次回にご紹介したいと思います。