保有している株が突然急騰した!
株式投資をしているといろいろなことが起こります。時には、保有している株が突然急上昇し、びっくりすることもあります。
その理由の1つとして挙げられるのが、保有している株につき、TOB(企業買収)がかけられた場合です。
例えば、B社の株式をA社が大量に取得してA社の子会社にしたい、というようなケースです。
通常、TOBを行う側は、株式公開買付けという制度を用いて、株主から株を買い取ります。このとき、現在ついている株価から数十%ほど高い価格に買付価格(買収をする側が、株主から買い取る価格)を設定することが一般的です。そうしないと公開買付けに既存の株主が応募してくれないからです。
そのため、株式公開買付けの発表がなされると、株価が買付価格にさや寄せするために株価が急上昇するのです。
直近の事例-N・フィールド(6077)のケース
直近では、訪問看護事業を展開するN・フィールド(6077)に対し、株式会社 CHCP-HNという会社がTOBを行い、公開買付けにより全株式の取得および完全子会社化を目指すことを発表しました。
買付価格は1,200円と発表されました。
(参考:「株式会社 CHCP-HN による株式会社N・フィールド(証券コード 6077 )の株券等に対する 公開買付けの開始に関するお知らせ」)
この発表がされたのが2月5日の取引終了後です。2月5日以降12日までのN・フィールド株の終値は次のようになっています。
- 2月5日 844円
- 2月8日 994円(ストップ高比例配分)
- 2月9日 1,144円(ストップ高比例配分)
- 2月10日 1,198円
- 2月12日 1,198円
・N・フィールド(6077)の日足チャート(2020年11月16日~2021年2月15日)
このように、買付価格である1,200円に限りなく近い価格まで株価が上昇しました。
2月5日の終値に比べて、買付価格は42%高い水準ですので、N・フィールド株を保有している投資家は瞬時に40%を超える値上がりを享受できたことになります。
この後は、何か特別な出来事がない限り、1,200円をほんのわずか下回る株価で推移することが予想できます。
保有株がTOBの対象となったらどうする?
では、保有している株がTOBの対象となり、株価が急上昇して公開買付けによる買付価格とほぼ同じ水準に達した場合、どうすればよいのでしょうか?
選択肢は「市場で売却」「公開買付けに応募」「そのまま保有」の3つです。
ただ、上記のN・フィールドのように、買収する側が完全子会社化を目指していて上場廃止をもくろんでいる場合は、そのまま保有を続けても上場廃止になってしまいますし、換金手続きが面倒な上最後は結局買い取られることになるので、あまり得策ではありません。
したがって事実上、市場で売却するか公開買付けに応募するかの2択になります。
筆者も、今までに保有株がTOBの対象となったことが何度もありますが、全て市場で売却しています。
もちろん、公開買付けに応募してもよいのですが、例えば上記のN・フィールドの場合で考えれば、市場で売却しても買付価格とほぼ変わらない1,198円前後で売却できます。
公開買付けに応募する場合、N・フィールドのケースでは決済開始が3月30日となっていて、現在(2月中旬)から1カ月半も先まで換金できません。
また、実際に公開買付けに応募するとなったら、指定された証券会社の口座を開設する必要があるなど、意外と手続きが面倒です。
筆者は、決済・換金に手間や時間がかかるのであれば、多少金額が安くなっても市場で売却してキャッシュにし、他の有望な銘柄に投資しなおす方が有利だと考えています。
もちろん、考え方は人それぞれですから、公開買付けに応募して、しっかりと買付価格と同額を確保するという考えもありです。
TOB合戦?すぐに市場で売却しない方がよいかもしれない理由
ただし、市場で売却する際に1つ押さえておきたい点があります。それは、公開買付けによる買付価格がつり上がる可能性があるということです。
典型的なケースが、いわゆる「TOB合戦」と呼ばれるものです。ある会社がTOBにより買収しようと公開買付けを発表した後、別の会社が「我が社もぜひ買収したい」と名乗りを上げ、先に公開買付けを発表した会社よりも高い買付価格を提示することが時々あります。
こうなると、もともとの買付価格がさらにつり上がることになるので、その前に市場で売却してしまうとせっかくの利益を得られなくなってしまうのです。
直近では、島忠(8184)のケースが記憶に新しいです。
最初は、DCMホールディングス(3050)が公開買付けによるTOBを表明しました。買付価格は4,200円と発表しました。
ところがその後ニトリホールディングス(9843)が公開買付けによるTOBを表明、買付価格をDCMホールディングスが提示した金額より高い5,500円としました。
その結果、もともとDCMホールディングスが提示した買付価格にさや寄せしていた株価は、ニトリホールディングスが提示した高い買付価格にさや寄せするためにさらに大きく上昇することになったのです。
・島忠(8184)の日足チャート(2020年9月1日~2021年2月15日)
このように、時にはTOB合戦によって買付価格がつり上がる可能性を考慮すると、買付価格近辺まで株価が上昇した後すぐ売ってしまうよりも、しばらく売らずに様子を見ておくのが得策ではないかと感じますし、筆者もそのようにしています。
無論、TOB合戦が起こらず、さらには公開買付けの中止などのアクシデントにより株価が下がってしまうリスクもゼロではありませんから、買付価格近辺で早めに確実に売っておこう、という考え方も間違ってはいないと思います。
実は今回ご紹介したTOBの話は、代表的な2つのケースのうちの1つです。もう1つのケースに当てはまる場合は、少し話が変わってきます。それについては次回にご紹介したいと思います。
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