FRBやFOMCの機能

 地区連銀を統括するFRBは政府機関として創設されました。実は、FRBのサイトのドメインは.gov、地区連銀のサイトは.orgで終わっていたりと、細かいところにも違いが反映されています。

 中央銀行は公的な役割を担いながらも、政府とは独立した銀行なので、日本銀行のサイトはor.jp、英国の中央銀行であるイングランド銀行のサイトはco.ukという具合に、政府機関ではないことを表すようにしている中央銀行もあります。

 FRBは7名の理事から成るのですが、現在は6名。空席が生じています。理事の任期は14年。大統領の指名と上院の承認が必要です。

 上院が要求する学識・実務能力などのハードルが高く、トランプ前大統領が指名した人物が上院の承認を得られないこともありました。政権交代前の昨年12月にようやくウォラー氏が承認され、席を1つ空けたまま、バイデン大統領が就任しました。

 FRBの議長、副議長は理事でもあるのですが、こちらの任期は4年。大統領の指名と上院の承認が必要です。パウエル議長は2018年2月に就任したので、任期は2022年2月。議長として再任されるかどうかが注目されます。イエレン財務長官はトランプ政権下でFRB議長に再任されず、バイデン政権の誕生で政策実務の表舞台に返り咲きました。

 クラリダ副議長の任期は2022年1月、クオールズ副議長(銀行監督担当)の任期は今年10月です。議長、副議長の再任の有無、後任候補をめぐって、動きがある年になります。

 FRBの理事はFOMCのメンバーとして、金融政策についてどのようなスタンスをとるのかに注目が集まりますが、FRBの仕事はそれだけではありません。金融・経済に関する調査や地区連銀や金融機関の規制監督、金融に関わる消費者保護など多岐に及び、約2,800名の職員を有します。地区連銀の職員を含めたFRS全体では2万3,000人近い大所帯です。

 昨年の大統領選では、バイデン大統領がFRBに格差是正、特に、人種間の格差の是正を求めたこともあり、各国の中央銀行よりも幅広い役割を担うことになりそうです。元々、物価の安定、信用秩序の維持という中央銀行の共通の使命に加えて、雇用の最大化という課題もあったのがFRBですので、政策目標がさらに増えることになります。

 これまで、FRSを構成する地区連銀、FRBを中心に見てきました。最後はFOMC(連邦公開市場委員会)。日本で例えるなら、金融政策決定会合にあたりますが、地区連銀の総裁がFOMCのメンバーに含まれているという特徴があります。FRBの議長が委員長、ニューヨーク連銀の総裁が副委員長を務めます。他のメンバーは、FRBの理事、そして、ニューヨーク以外の11の地区連銀を4つのグループに分け、1年ずつの持ち回りで地区連銀の総裁が務めます。

 FOMCの定員は12名ですが、FRB理事に空席があるので、現在のメンバーは11名です。来年以降の持ち回りの地区連銀についても、FRBのサイトに記載されています。

 大統領選では、米国の分断が明らかになり、経済格差や地域ごとの政治スタンスの違いが浮き彫りになりました。そうした状況で多様性の重要さや格差是正を訴えるバイデン大統領が誕生し、FRBでは議長・副議長の任期が近づいています。地区連銀の総裁は管轄地域の加盟銀行の代表という性格も持ちます。

 米国の金融政策や金融規制は世界に影響します。分権型で複雑なFRSを理解することは、市場の流れをつかむ一助になるでしょう。