地方分権を反映した制度

 地区連銀はそれぞれが独立した銀行で、各地区連銀に総裁がいます。総裁の決め方も地方分権を反映しています。各地区連銀の理事9名の中から、総裁が選ばれ、FRBが承認するのですが、理事の選び方が地方の意向を反映するような仕組みになっています。

 9名の理事のうち、3名はFRSの加盟銀行の役員などから加盟銀行による投票で選ばれます。加盟銀行は資本規模に比例する形で、地区連銀に出資しています。出資者・株主なので、役員を地区連銀の理事として送り込むというわけです。ただし、議決権は出資額に関わらず、一票ずつ。大手行が有利にならないようにけん制する仕組みが取られています。

 残る6名は加盟銀行の役員以外から選ばれますが、3名は加盟銀行による投票、3名はFRBによる指名です。FRBが指名した3名には、議長、副議長が含まれます。

 理事9名中6名は加盟銀行の投票で選ばれ、3名はFRBの指名(議長、副議長を含む)という形で、政府の関与が大きくなることを抑えています。こうして選ばれた9名の理事が、互選で総裁と第一副総裁を選び、FRBが承認します。

 地区連銀は中央銀行としての銀行業務のほか、地区連銀景況報告書を作成しています。年8回開催される連邦公開市場委員会(Federal Open Market Committee:FOMC)の2週間前の水曜日に公表され、政策判断の材料になる注目度の高い資料です。報告書の表紙の色からベージュブックと呼ばれています。

 ちなみに、日本銀行も、ベージュブックに倣って、年4回、地域経済報告を作成しています。ベージュブックのように知名度が上がり、多くの人に読まれるよう、先にさくらレポートの愛称を決め、それに合わせて、表紙の色を淡いピンク(桜色)にしました(Wikipediaなどでは、表紙からさくらレポートとも呼ばれるとありますが、決めた順番としては逆です)。

 さくらレポートは支店長会議に向けて収集された情報で作成されているため、年8回開催される金融政策決定会合とは紐づいていません。年々、注目度が高まっている資料ではありますが、こうした点からも中央集権型のシステムをとる日本銀行と地方分権型のシステムをとるFRSの違いが見て取れるかと思います。