株式投資で利回りを稼ぐ

 株式投資というと、「値上がり益ねらい」と思い込んでいる人が多いですが、少し発想を転換していただきたいと思います。今の日本株には、値上がりはあまり期待できないが、安定的に高い配当利回りが期待できる銘柄が増えているからです。

東証一部の平均配当利回りと長期金利(10年国債利回り)推移:1993年5月~2021年2月(1日)

注:楽天証券経済研究所が作成

 昔の日本株は、確かに、配当ではなく、値上がりを狙って買うものでした。1993年ころ、東証一部の平均配当利回りは1%もありませんでした。当時、長期金利(新発10年国債利回り)が5%近くあったことを考えると、株の利回りは低すぎて、話になりませんでした。

 ところが、その後、長期金利が下がり続ける中で、日本株の利回りは上昇し続けました。【1】株価が下落したことと、【2】日本企業が株主への利益配分を増やすようになったことが、利回り上昇の要因です。

 ところで、皆様は、1993年ころ日本の長期金利が5%もあったことを覚えているでしょうか。そこで10年新発国債を買えば、10年間で税引き前50%の確定利回りが得られました。すばらしいリターンです。それでも、当時、5%の利回りに魅力を感じた投資家はあまりいませんでした。なぜでしょう?

 今では信じられないことかもしれませんが、当時は、まだインフレ期待が高く、5%程度の利回りでは、十分にインフレをカバーすることができないと考えられていました。インフレに弱い債券投資より、インフレに強い、不動産投資や株投資に魅力を感じる人が多かったのです。後から振り返ると、そこは、日本がデフレ社会に突入する入り口でした。値上がり益をねらって動くものを追いかけるより、じっくり長期国債で利回りをねらった投資をすべきでした。

 それでは、これからの10年はどうでしょう。長期国債の利回りがあまりにも低くなってしまったため、国債の投資魅力は無くなりました。

 そこで、注目されるのが、日本株の予想配当利回りの高さです。配当利回りから日本株を見直していい時代に入ってきました。東証一部の平均配当利回りは約2%ですが、個別銘柄で見ると、日本を代表する大型株で配当利回り4%を超える銘柄が多数あります。大型高配当利回り株から投資していったら良いと思います。

 利回りの高いものに投資というと、まず、外貨建て債券への投資を思い浮かべる人が多いと思います。海外の金利は日本よりも高く、魅力的です。ただ、円高になると投資元本が目減りするので注意が必要です。為替リスクを負わずに投資できる日本株の高配当利回りものの魅力はより高いと思います。

 ただし、1つ注意が必要です。株の配当利回りは、確定利回りではありません。業績が悪化して減配になれば、利回りが低下します。株価が大きく下がる可能性もあります。銘柄選択にあたっては、単に予想配当利回りが高い銘柄を選ぶのではなく、長期的に保有して減配になりにくい銘柄を選ぶことが大切です。

 全ての上場銘柄から予想配当利回りが高い銘柄を抽出すると、上位には、予想配当利回り7%以上の銘柄もあります。一見魅力的ですが、ここは注意が必要です。予想配当利回りが高すぎる銘柄には、減配リスクの高いものが多いからです。減配リスクが低い高配当の有望銘柄は、予想配当利回りで4~6%の辺りに多数あると思います。

 それでは、減配リスクの低い銘柄を選ぶための、4条件を具体的に見てみましょう。