ドル安の構図は当面揺らがなさそう

 今月末の終値が104円台に乗せなくても、103.30円近辺以上で終われば、8月以来、5カ月振りに陽線(*)となります。それぐらいドル安進行が続いていたことになりますが、しかし、上述しましたように、バイデン新政権下でも金融政策と財政政策の連携によって、大きな枠組みは変わっていないことから、ドル安の構図は当面揺らがなさそうです。ただ、ドル売りの圧力は弱まっているようにも見えます。(*始値よりも終値が高いこと。1月末が月初よりもドル高・円安で終わること)

 米10年債利回りは、パウエル議長の発言後下がりました。しかし、昨年4月以降1%以内で推移していましたが、今年に入って1%台はキープしている状況です。この辺りが、円高にややブレーキがかかっている背景かもしれません。

ドル/円の現在の動きは、前途多難な米新政権を様子見

 1月上旬の株高・金利高・ドル高は、経済対策とワクチン普及による経済回復期待が背景ですが、ブレーキが外れるとしたら、この経済回復期待が後退することによって起こるかもしれません。

 新政権が掲げている1.9兆ドルの経済対策について、共和党との交渉が難航し規模縮小の動きが出れば、1月にドルを支えた要因が剥落するため警戒する必要があります。

 トランプ前大統領の弾劾裁判については、マーケットには今のところ無風ですが、弾劾裁判について共和党は分断を招くだけで「融和」に反すると反発しています。一方で、民主党内では左派を中心にトランプ弾劾の意見が根強い状況となっています。弾劾裁判の議論が経済対策の交渉の足かせになり、規模や実施時期に影響しないか気になるところです。

 また、バイデン大統領はコロナ対策が一番の課題と明言しており、100日間(4月末)で1億回分の接種を目指すとしていますが、ワクチンの普及スピードが予定よりかなり遅れている状況となっています。米国の感染者は2,500万人を超え、死者は41万人近くとなっています。この感染スピードは米国民が2秒に1人感染し、30秒に1人死亡している状況とのことです。このままワクチン普及が遅々として進まず、感染抑制ができなければ、景気回復への期待が後退することも予想されます。ドル/円の現在の動きは、前途多難な米新政権の様子を観察しているような動きかもしれません。