通貨政策:財務長官に就任予定のイエレン氏は、ドル安を目指さない姿勢を強調

 通貨政策について、民主党はドル安政策を志向するという見方が根強いですが、財務長官に就任予定のイエレン氏は、19日、米上院での指名承認に向けた公聴会で所信を述べ、ドル安を目指さない姿勢を強調しました。イエレン氏は、「米国は競争を有利にするために弱いドルを求めることはない。他の国がそのようにすることも反対だ」と、他国のドル安誘導もけん制しました。トランプ前大統領は、米国の製造業の競争力を高めようと、何度もドル高をけん制しましたが、イエレン氏はドル高をけん制することも、さらにドル安を求めるということもないと明言しました。為替政策については、国際金融の原則論に戻り、「ドルやその他の通貨の価値は市場で決まるべきだ」と指摘しています。

イエレン新財務長官とパウエル議長は現況下ではベストの組み合わせか?

 イエレン氏の発言はドル高には反応しませんでした。公聴会で「今は大きな行動を取ることが賢明だ」と、積極的な財政出動を行う考えを強調したからです。財政赤字の拡大はドル安要因であるため、長期の金融緩和を継続するパウエル議長との連携によって、マーケットではドル安シナリオの追い風となったようです。

 米経済回復による金利上昇は、いわゆる「良い金利上昇」としてドル買い要因となり得ますが、財政拡大による国債増発懸念は、国債価格下落という形で、いわゆる「悪い金利上昇」とみなされ、本来はドル売り要因となり得ます。しかし、FRBの長期の量的緩和によってこの懸念が吸収され、「悪い金利上昇」を伴う悲観的なドル売り要因とはなっていないようです。

 イエレン氏がFRB議長の時代に理事として支えていたのがパウエル現FRB議長です。パウエル議長は強力な緩和姿勢を続ける姿勢を示した上で、財政出動を繰り返し求めています。イエレン新財務長官とパウエル議長は現況下ではベストの組み合わせかもしれません。

 ドル/円は102円台からの反転後、103.50~104.00円で推移しています。103円台が堅いのか、104円台が重たいのか、米大統領就任式も無事に終わったことから、次の材料を探しているかのような動きです。