米個人投資家の投機的な取引が下落に拍車をかけた

 日米ともに「下げ切らない強さ」を幾度となく発揮してきたこれまでの相場は、先週になってまとまった下げを久々に見せたわけですが、今後の展開を予想する上で最大のポイントになるのは、先週の株価下落に拍車をかけたのが、新型コロナウイルスでも企業決算でもなく、米個人投資家による一部の投機的な取引と、それに伴う状況だったという点です。

 この投機的な取引とは何かを簡単に整理すると、個人投資家がSNSなどを通じて連携し、空売り残高の多い銘柄に集団で買いを仕掛け、空売り残高を積み上げていたヘッジファンドに損失を発生させて圧力をかけるというものです。

 実際に、ターゲットとなった銘柄の株価が上昇し、ヘッジファンドが損失を抱え、買い戻しや追加担保の確保に迫られる事態となりました。それに伴い、対象の銘柄も企業の本来の実力とはかけ離れた株価になっています。

 こうした事態は、一部の銘柄による局所的な動きであり、「相場への影響は一時的」という見方が多いようですが、今回の個人投資家の行動が「共謀や株価操作にあたるのか」をはじめ、個人の大量の注文が殺到して「取引システムの障害が相次いで発生した」こと、個人投資家に対して取引制限を実施した「ネット証券会社の対応の是非」や、その証券会社のひとつであるロビンフッドの「ビジネスモデル(顧客の注文データを機関投資家やマーケットメーカーに提供して収益を得る)の正当性」など、さまざまな論点や問題、課題が浮き彫りにされています。

 さらに、資金を確保するためにヘッジファンドが他の銘柄を売却するなど、他の銘柄にも影響が出ているほか、投機的な値動きを敬遠する投資家の株式市場離れ、そして、こうした事態を生み出す遠因となった金融緩和自体に対する批判などに発展してしまうことも考えられ、思ったよりも影響が長引く可能性があります。

 いずれにしても、これまでの「下げない強さ」に揺らぎが生じ、今週の日本株は大きく上下に振れる乱気流に立ち向かうことになります。目先で反発する場面があったとしても、これまでのような積極的に上値を追う展開にはなりにくく、神経質な値動きを意識しておく必要がありそうです。