日経平均の見通し 

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

「堅調な見通しだが、にじみ出る不安も」

 今回調査における日経平均の見通しDIは、1カ月先がプラス3.81、3カ月先はマイナス0.48という結果でした。前回調査の結果がそれぞれ18.60、マイナス1.99でしたので、1カ月先が後退し、3カ月先は改善した格好になります。

 調査期間(12月28~30日)中の日経平均は比較的強い動きだったことを踏まえると、思ったほど強気に傾かなかったのかもしれません。とりわけ、1カ月先のDIの内訳グラフを見ると、強気の割合が27.85%となっていますが、前回調査(37.91%)からかなり減少したことになります。

 その一方で、弱気派24.05%(前回19.31%)、中立派48.10%(同42.78%)となっているため、強気派の減少分はやや中立派の方に多く流れたと言えます。大きく下げるほどの見通しではないものの、「これまで急ピッチな上昇が続いていたため、ひとまず上昇が一服しそう」という、高値警戒感の表れかもしれません。実際に、中期的な見通しである3カ月先の強気派の割合は29.15%と、前回の27.77%から増加しています。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 2021年相場入りとなった国内株市場は、大発会からの3日間の日経平均は下げてスタートしましたが、その後に急上昇し、2万8,000円台に乗せてきました。足元では新型コロナウイルス感染状況の悪化が懸念されながらも、株式市場は「下げ切らない強さ」を見せています。

 また、2021年の株式市場の見通しについては、いわゆるコロナ禍のゲームチェンジャーとなり得るワクチンの普及や効果、継続的な金融・財政政策による社会・経済の正常化期待などによって、上昇を見込む声の方が多くなっていますし、注目されていた米ジョージア州での上院議員の決選投票も、大方の予想に反して民主党の勝利となったにもかかわらず、規制強化や増税懸念よりも、目先の財政出動への期待の方が勝り、米株市場は強い基調を保っています。さらに、日米で決算シーズンが本格化していきますが、市場の見立て通りに企業業績が伸び、今後もその傾向が続きそうであると確認されれば、株価水準はさらに高みを目指していくと思われます。

 その一方で、丑年となる2021年は相場格言上で「躓き(つまずき)」とされていることもいろいろなメディア等で言及されており、注意は怠れません。実際に、過去の丑年の日経平均騰落率をさかのぼってみると、2009年(19%高)、1997年(21%安)、1985年(13%高)、1973年(17%安)と上げ下げが交互に訪れています。

 今後も「将来の期待」と「現実の不安」との綱引きが続いていくことになるわけですが、相場の視点がさらに現実寄りとなるのであれば、次第に各国の対応力の差が出てくると思われます。社会・経済面での二極化や格差拡大などが問題視されつつある中、「ウイルスの不安を、ワクチンや金融・財政政策などがはねのける」という単純な構図に変化が生じる可能性があるわけです。

 日本国内では、年明け早々に一部地域で緊急事態宣言が発令される事態となっていますが、前回の宣言よりも緩い内容のため、その効果について懐疑的な見方も多い中、なぜか2月7日までという期限が決まっています。

 今後も政府・自治体の対応が中途半端なままだと、信頼を得ることがむずかしくなり、ゴールデンウィークや年末年始などの「稼ぎ時」を逃し、感染も抑制できなかったこれまでの経緯が繰り返されることになってしまいます。となると、さらにその先にある五輪の開催にも影響が出てきます。

 五輪については、3月にIOCのバッハ会長が来日する予定ですので、開催の判断はそのタイミングで行われるのでないかと言われています。日本政府としては、コロナの状況がよほど悪化していない限り、無観客での競技実施や、参加国の規模縮小など、何とか開催に向けて動くことが予想されますが、少なくとも、海外各国から「感染リスクの高い日本には行きたくない」と言われないようにする必要があり、ワクチン期待があるとはいえ、実は時間的な猶予はあまり残されていません。

 そのため、現在は日本のコロナを含めた対応力が試されている局面と言えます。ここでもたついてしまうと、今後の株式市場や社会・経済などの面で出遅れることになってしまうかもしれません。