今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後、投資してみたい国(地域)」で、「米国」と「日本」、そして「中国」を選択したお客さまの割合に注目します。

 当該質問は複数回答可で、選択肢は、日本、米国、ユーロ圏、オセアニア、中国、ブラジル、ロシア、インド、東南アジア、中南米(ブラジル除く)、東欧、アフリカ、特になし、の13個です。

図:質問「今後、投資してみたい国(地域)」で、「米国」、「日本」、「中国」を選択したお客さまの割合 ※複数回答可 ※日本は、2016年5月より選択肢に追加

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 2020年12月の調査で「米国」を選択した人の割合は64.07%、「日本」を選択した人の割合は43.02%、「中国」を選択した人の割合は21.44%でした。

 2016年5月の調査から選択肢に含まれた「日本」は、これまで、おおむね40%前後で推移してきました。かつて、10%台だったことがある米国や、60%前後をつけたことがある中国のような、大きな変動はなく、安定して40%前後で推移しています。この点は、前回、「今後、投資してみたい金融商品・国(地域)」で述べた、「国内株式」が50%をほとんど割らない点と、一定の水準を底割れしないという意味で、符合します。

 グラフのとおり、2016年より、「米国」が上昇し始めました。当時は「日本」が「米国」をやや上回っていましたが、ほどなくして、「米国」が「日本」を抜き去り、今では「米国」が「日本」を上回る状態が、常態化しています。

 2016年6月の選挙の結果は、英国はEUを離脱する、というものでした。この結果について、“ポピュリズム(大衆迎合主義)”を世界に広げかねない、などと懸念を表する報道が相次ぎました。そして、このような懸念をさらに強くしたのが、同年11月のトランプ氏の米大統領選挙での勝利でした。

「ポピュリズム」は、リーダーが、大衆の欲求不満や不安をくみ取り、支持を得た上で、エリート層や政治的な敵を見つけて批判し、相対的に自分の立ち位置を有利にする考え方と言えます。

 このようなリーダーに扇動され、大衆の欲求不満や不安が膨大なエネルギーになった時、「ポピュリズム」は、革命のきっかけとなることがあります。このため、2016年に行われた大規模な2つの選挙(大衆が意思を表明する場)で実現した、英国のEU離脱、米国での大衆の欲望をあおるリーダーの誕生は、大きな不安をかきたてました。

 この2016年を境に、「今後、投資をしてみたい国(地域)」において「米国」が上昇し、「日本」が現状を維持した(横ばいだった)のは、「ポピュリズム」の台頭懸念が生じたことと、無縁ではないと、筆者は考えています。

「ポピュリズム」を利用して支持を集め、経済を回復させようとしたリーダーがいた「米国」と、「ポピュリズム」の台頭を懸念としつつも、自らの姿勢を(良くも悪くも)貫いてきた「日本」という構図が、2016年から現在まで、本質問における回答割合の差を拡大させた要因となったと、筆者は考えています。

 振り返れば、ある意味、この2016年が、個人投資家の皆さまの中に「米国」が根付いた瞬間だったのかもしれません。

 そして「日本」は今、「中国」に追われています。「中国」を「今後、投資してみたい国(地域)」とする人の割合は、特に新型コロナの感染拡大が始まった2020年序盤以降、上昇しています。早期にコロナを鎮静化し、感染拡大が続く先進国と差別化を図ったことが、一因とみられます。

「米国」との差が開き、「中国」との差が縮まる「日本」。2021年の日本の重要イベントである、新政権発足やオリンピック・パラリンピックなどをきっかけに、「米国」との差を縮め、「中国」との差を離すことができるのか、この点は、楽天DIにおける、2021年の注目点だと、筆者は考えています。

表:今後、投資してみたい金融商品 2020年12月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域) 2020年12月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成