2020年、ふるさと納税ここが変わった!

 新型コロナ感染拡大が本格化したことで生活が一変した2020年。生活や働き方などにも大きな影響があった方が多いと思います。その影響はふるさと納税にまつわる状況にもさまざまな形で表れました。

1:ふるさと納税、コロナ禍でも大人気

  まず例年との違いを感じたのは3~4月のこと。「寄付が伸びている」とおっしゃる自治体担当者さんたちが多数いらっしゃって、内心驚いたことを覚えています。
 コロナの影響に怯え沈んだ雰囲気にもかかわらず、自粛ムードの中でも「ふるさと納税」を楽しむ気持ちになれるのか? コロナの影響で収入が下がる心配はないのか? など、正直、意外な情報でしたが、いろいろな情報を重ねてみると

1.ステイホームでふるさと納税に取り組む時間的余裕ができたこと
2.コロナ禍で苦しむ生産者を支援したい気持ちが芽生えたこと
3.外出を控えるために宅配感覚で野菜やお米などの食材を選ぶ人もいた

 など、寄付者の変化があったのも一因と思えます。

2:ふるさと納税が通販感覚へ。自治体の苦悩発生…

 一時期、どこへ行っても買えなかったトイレットペーパーやティッシュペーパー、マスクも「ふるさと納税ならあるのではないか」と紙類の返礼品に寄付が集まりましたが、結果、ふるさと納税特有の 「すぐには届かないことが多い」という事象が起こり、困った寄付者やクレーム対応に追われた自治体も多かったようです。
 本来であれば、お届け日は自治体任せで、いつ届くのかが分からないことも含めてワクワクするのがセオリーですが、そこでもコロナゆえの焦りや、例年と違う状況が発生していることが見て取れました。自治体の立場では、寄付は嬉しいけれど通販感覚でのクレームが続いたことは、心中、複雑だったことと思います。

3:「コロナ支援品」登場!

 そして今年ならではの特徴として、ふるさと納税の返礼品の中に「コロナ支援品」が登場したことです。新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受けている事業者・生産者に対し、寄付による支援をすることができる返礼品です。苦境に陥っている事業者・生産者を、寄付という形で直接支援することができるという手法は、ふるさと納税の根本に立ち返ることができる素晴らしい変化でした。

4:「#元気いただきますプロジェクト」参画!

 農林水産省の補助事業である「#元気いただきますプロジェクト」がふるさと納税にも活用されたことも大きな動きの一つです。これは、コロナの影響で、行き先を失った国産食材を食べて応援しようという生産者支援の補助事業です。楽天ふるさと納税では対象自治体数:212自治体、返礼品数:約1270点(2020/11/27 17:00現在)が参画し、寄付者の思いが直接、支援となって届けられています。

5:法改正後の新ルール定着

 2019年6月の法改正以降、「寄附金に占める返礼品割合が3割以下、地場産品のみとする」という、いわゆる“3割ルール”が徹底されました。つまりは、極端な量や寄付金額に合わない高額で目をひく返礼品で寄付を募るなど、ふるさと納税の目的に合わない手法を廃止し、高額競争などが過熱しないようにルールを定めました。2020年、自治体からの返礼品は、これらのルールにのっとったラインナップとなり、ルール定着化への姿勢が感じられました。

6:大阪泉佐野市、最高裁で逆転勝訴

 そしてもう1つ、大阪府泉佐野市の最高裁での逆転勝訴も今年注目された話題です。上記の3割ルール徹底の際、規制基準に合わない自治体を、ふるさと納税の対象から除外する、という決定に対して、泉佐野市が除外決定の取り消しを求め、「新制度の施行前は、返礼品の提供で特に法令上の規制は存在しなかった」という理由で、泉佐野市は逆転勝訴しました。ふるさと納税を継続していくためにも、ルール設定のあり方が改めて問われた裁判でした。

くみくみが感じた、ふるさと納税への期待

 ふるさと納税のコンサルタントとして、自治体側の方とお話をすることが非常に多いのですが、自治体の方はみな、寄付者の方の声をとても聴きたがっているのを強く感じます。どんな返礼品がうれしいのか、中身は、量は、パッケージは、送られてくる頻度は…? と、寄付者さんんの反応を聞いて、少しでも喜んでもらえる返礼品を用意しようとしている熱い思いを感じることが多々あります。

「#元気いただきますプロジェクト」についても、自治体側の意見を聞いてみましたが、「苦しむ事業者のためにはこの制度があって良いと思う。しかしこの支援がなくなった時、量やお得に慣れた寄付者の感覚が元に戻ってくれるか? お得な時に申し込んだ反動で、戻った時に止まってしまわないか心配」と不安がる声と、「入り口は量かもしれないが想定外に広告効果となり、その美味しさを知った寄付者は元に戻っても選んでもらえそう」と期待する声の両方が聞かれました。

 寄付してくださった心に、返礼品でせいいっぱい応えたい、という気持ちが非常に強く、そこには通常のビジネスでものを売買する以上の熱が生まれていることを感じます。

 人気返礼品が多く、寄付額や規模もトップクラスの自治体も、寄付が増える事を喜ぶ一方、万が一、ふるさと納税が何らかの事情で中断・廃止になるケースを常に想定しています。寄付額を増やす目的としてだけではなく、実際にその自治体を訪れてくれる交流人口や移住定住など、ふるさと納税を越えた販路拡大の手段としてとらえた方向に舵を切り、進み始めています。

 制度としては成熟しておらず、矛盾を多くはらんでいることも事実ですが、2020年のコロナ禍で、「助け合い」の一つの形として、存在意義や認知が進んだことが、大きな変化であり、今後の期待になった、と実感しています。ふるさと納税の寄付者であり、自治体サポート側でもある私にとって、この「ふるさと納税」が、今後も継続して、人と人をつなぐ一つの形として、守り、育てていきたいと願っています。