6:[環境配慮]合成液体燃料が普及し、ディーゼル車の需要が一定程度残る

 合成液体燃料(e-Fuel イーフューエル)は、水(H2O)と二酸化炭素(CO2)を合成して生成される液体燃料です。既存のガソリン車の燃料であるガソリンや、ディーゼル車の燃料である軽油に添加され、使用されます。

 合成液体燃料の生成は、再生可能エネルギーを使い水(H2O)を電気分解して生成した水素(グリーン水素)と二酸化炭素(CO2)を、水(H2O)と一酸化炭素(CO)に変換し、水素(H2)と一酸化炭素(CO)から炭化水素(燃料)を変換して行われます。つまり、合成液体燃料は、水(H2O)と二酸化炭素(CO2)から、生成されているのです。

 ガソリンや軽油に添加する際、20%程度がよいとする報道もあります。トウモロコシやサトウキビから作られるバイオ燃料と同様、既存の燃料に添加するため、既存のガソリンスタンドなどのインフラ、内燃機関の製造・メンテナンスなどの技術を、そのまま使用することができます。

 燃料の生成時に二酸化炭素(CO2)は吸収しているため、それを添加した燃料で走った内燃機関を持つ自動車が排出する二酸化炭素は、低減されたとみなします。このように、欧州が先行する炭素中立(カーボン・ニュートラル)の考え方は、自動車を走らせることだけではなく、燃料の生成から“全体として”二酸化炭素の排出量を抑えることを目指すものです。

 電気自動車(EV)は、走行時に二酸化炭素を排出しないためエコと言われていますが、特に日本のように火力発電をメインに発電している国において、電気自動車はエコかと問われれば、疑問符が付きます。電気自動車に搭載する電池を製造する際に、多くの二酸化炭素を排出するとも言われています。

 合成液体燃料の使用は、燃料の生成から自動車の走行までを考慮した上で、二酸化炭素の排出量を低減し、かつ、既存のインフラや技術を生かすことができる、電気自動車(EV)にはないメリットがあります。

 ハイブリッド車(HV)を走らせる燃料に合成液体燃料を添加することがあたり前になれば、二酸化炭素の吸収と、既存のインフラ・技術を生かすことを、より両立できるのではないか、と筆者は考えます。

 合成液体燃料の研究・開発は、日本や欧州で進んでいます。歴史的に、自動車産業が根付いている地域・国だからこそ、二酸化炭素の吸収も、そして既存のインフラ・技術を生かすことも、求められているのだと思います。

 そして合成液体燃料の使用が普及することは、ガソリンや軽油で走る自動車が一定程度残る、すなわち、プラチナの自動車排ガス浄化装置向け需要が一定程度残ることを意味すると、筆者は考えています。

 4[環境配慮]電気分解が行われる電極部分にプラチナを使う“水素生成装置”の需要が増す、5[環境配慮]発電装置の電極部分にプラチナを使う“燃料電池車”が普及し始める、6[環境配慮]合成液体燃料が普及し、ディーゼル車の需要が一定程度残る、の3つについては、世界的なブームともいえる環境配慮起因の、プラチナの需要を増加させる(少なくとも減少させない)可能性がある要因として、注目に値すると考えます。

 コロナ禍で新しい生活習慣が浸透する中、人々の間では、前向きな社会変化を創る潮流が生まれてきていると感じます。このような潮流は“社会貢献”を是としているため、世界全体で、環境問題への取り組みが一段と進みやすくなっていると、感じます。

 そこに、クリーンエネルギー策を推進することを明示したバイデン氏が米大統領選で勝利を確実にしたり、各種金融機関が盛んにESG関連商品(ESGの“E”:environmentの部分が環境)を販売したりしているため、環境配慮のブームはさらに熱くなってきています。

 世界が一丸となって進めている環境配慮は、プラチナに新しい需要を与え、そしてプラチナ価格を上向かせる要因になるとみられます。そして、そのような動きが具体的に見え始めるのが、2021年なのだと、筆者は考えています。

[参考]貴金属関連の具体的な投資商品

純金積立

金(プラチナ、銀もあり)

国内ETF/ETN

1326 SPDRゴールド・シェア
1328 金価格連動型上場投資信託
1540 純金上場信託(現物国内保管型)
2036 NEXT NOTES 日経・TOCOM金ダブル・ブルETN
2037 NEXT NOTES 日経・TOCOM金ベアETN

海外ETF

GLDM SPDRゴールド・ミニシェアーズ・トラスト
IAU iシェアーズ・ゴールド・トラスト
GDX ヴァンエック・ベクトル・金鉱株ETF

投資信託

ステートストリート・ゴールドファンド(為替ヘッジあり)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)
三菱UFJ純金ファンド

外国株

ABX Barrick Gold:バリック・ゴールド
AU AngloGold:アングロゴールド・アシャンティ
AEM Agnico Eagle Mines:アグニコ・イーグル・マインズ
FNV フランコ・ネバダ
GFI Gold Fields:ゴールド・フィールズ

国内商品先物

金・金ミニ・金スポット・白金・白金ミニ・白金スポット・銀・パラジウム

海外商品先物

金、ミニ金、マイクロ金(銀、ミニ銀もあり)