なぜ今、円高? 

 先週、1ドル=103円台へ、円高が進みました。米FRBが、2019年以降積極的な金融緩和を実施するようになってから、ドル金利の低下とともに、ドル安(円高)は、円高方向に進むようになってきました。

ドル/円為替レート推移:2018年1月2日~2020年12月18日

 先週、米FRB(連邦準備制度理事会)が、金融緩和を長期化する方針を示したことから、ドルが主要通貨に対して、全面安となりました。

 ドル/円為替レートは、さまざまな要因から動きますが、もっとも重要なのは、日米の金融政策スタンスの差です。米FRBが大規模な量的金融緩和を行い、ドルの供給を増やせば、ドルの価値が低下し、ドル安(円高)となります。F米RBが引き締めれば、逆にドル高(円安)が進みやすくなります。

 ドル/円は、日本の金融政策の影響も受けます。日銀が大規模な量的金融緩和を行い、円の供給をどんどん増やしていくと、円の価値は下がります。つまり、円安になりやすくなります。逆に、日銀が引き締めに転じ、円の供給を減らすと、円の価値が上がり、円高となりやすくなります。

 2020年に入り、日銀は従来通り、大規模緩和を続けていますが、これ以上の緩和はできないので、「現状維持」となっています。一方、米FRBはコロナ禍を受け、金融政策の緩和姿勢を強めています。この差が、ドル安(円高)につながっています。

 日米金融政策のスタンスの差が、もっとも良く表れているのが、日米の金利差です。以下の通り、ドル/円は、日米金利差に影響を受けて動いているといます。

日米2年金利差(2年国債利回りの差)推移:2008年1月~2020年12月(18日)

日米2年金利差と、ドル/円為替レート推移:2008年1月~2020年12月(18日)

 2008年以降のドル/円の動きを簡単に振り返ります。2008年から2012年にかけて、米FRBが大規模な量的緩和を行う中、日本銀行は金融緩和に消極的だったため、日米金利差が縮小し、ドル安(円高)が進みました。2013年から2018年にかけて、日銀が積極的な量的緩和を行う中、米FRBは引き締めを行いましたので、日米金利差が拡大し、ドル高(円安)が進みました。

 ところが、2018年以降、米FRBが緩和姿勢に転じたので、日銀が異次元緩和を続けていても、ドル高(円安)は進みにくくなりました。2020年に米FRBが緩和をさらに強化し、米金利が急低下すると、ドル安(円高)が進みました。