先週の「ジャンル横断・騰落率」を受けた今週の見通し

 ここ1カ月間の原油相場の上昇と、今後の原油相場の見通しについて書きます。

 米大統領選挙の投票日からおよそ1カ月間で、原油相場は20%以上も上昇しました。パリ協定への復帰、クリーンエネルギーを重用することを標榜するバイデン氏が大統領選挙での勝利宣言をした上での上昇です。

 バイデン氏が勝利宣言をしたことで、世界に広く存在する、環境や人権に関わる問題が解決される期待が高まっています。また、複数の会社の新型コロナワクチン開発が実用化の段階に達し、これまで半年以上にわたってさらされてきた同ウイルスの脅威から抜け出すことができる期待が高まっています。

 原油もまた、このような“期待”や“まだ起きていないことへの強いプラスの思惑”が、株価指数・コモディティ(商品)を問わず、幅広く上昇させた“バイデン・ワクチン相場”で上昇した銘柄の一つと言えます。

“バイデン・ワクチン相場”の概略については、以前のレポート「“バイデン・ワクチン相場”で見えた、金(ゴールド)と原油の実力」で触れています。

“バイデン・ワクチン相場”という、多くの市場の底上げ要因の他、原油特有の上昇要因もあります。

 OPECプラスが、1月の原油の減産において、削減量の縮小規模を当初の予定よりも小さくすることを決定しました。OPECプラス起因の、需給の緩みが生じにくくなることへの期待も、足元の原油相場の上昇の一因とみられます。

 OPECプラスは、12月3日(木)に開催した、第12回OPEC・非OPEC閣僚会議で、2021年1月の削減量を、12月よりも日量50万バレル少ない、日量720万バレルとすることを決定しました。もともと、1月の削減量は12月に比べ、日量190万バレル縮小することとなっていましたが、今回の会合では、それを変更し、日量50万バレルの縮小にとどめました。

 今年3月末で一時中断し、5月に再開した協調減産の削減量である日量970万バレル(2020年5月から7月)、日量770万バレル(8月から12月)、今回決定した2021年1月の削減量である日量720万バレルは、いずれも、かつてのOPECプラスの削減量に比べれば、とても大きな規模です。

 現在の協調減産が始まったのは2017年1月でしたが、その時の削減量は日量116万バレルでした。2020年5月の再開後の減産の規模は、その6~8倍です。

 あまり報じられていませんが、現在のOPECプラスは、当人たちとしては、以前に比べ、かつてない規模の減産を実施しているわけです。

 OPECプラスの配下組織であるJMMC(共同閣僚監視委員会)は、OPECプラス全体の2020年10月の減産順守率について、減産順守の目安である100%を超えたとしています。かつてない規模の減産を、OPECプラスは全体として、順守しています。

 また、削減量が大きいだけではなく、“埋め合わせ”の条項が、現在の減産に導入されています。これは一時中断前と異なる要素です。これは協調減産実施にあたり、国ごとに定められた削減量に対し、削減できなかった分(減産未達分)を、翌月以降、通常の削減量に上乗せするものです。

 一時中断するまでは、余裕をもって減産をしている国が、余裕のない国の分まで削減をし、“肩代わり”をする場面が散見されていました。しかし、現在は参加国が厳格に、個々に課された削減量を削減することが求められています。

 今回の会合で、1月以降、毎月会合を開催し、“埋め合わせ”の状況を監視することも決まりました。(毎月会合を開催するといっても、実際のところ、今年5月の協調減産再開以降は、ほぼ毎月、JMMCを開き、減産順守率を公表し、時には、定められた削減量を削減できなかった国の名前を公表してきました)

 OPECプラスは、かつてない規模の減産を実施することを公言し、実際にそれを順守し、かつ、個別の国ごとの順守を徹底することを、自らに課しているわけです。

 このようなOPECプラスの取り組みを、市場は前向きに受け止めているとみられます。このことは、足元の原油価格の上昇の一因になっているとみられます。

 今後も、“バイデン・ワクチン相場”が続き、かつOPECプラスの減産への前向きな取り組みが続けば、原油相場はさらに上値を切り上げる可能性があると、筆者は考えています。

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