裁定売り残に表れる、投機筋の日経平均先物「空売り」の動向

 詳しく説明すると難解になるので、説明は割愛して結論だけ述べます。東京証券取引所が発表している「裁定売り残」の変化に、投機筋(主に外国人)の日経平均先物「売り建て」の変化が表れます。売り建てが増えると裁定売り残が増え、売り建てが減ると裁定売り残が減ります。以下をご覧ください。

日経平均と裁定売り残の推移:2018年1月4日~2020年11月11日(裁定売り残は2020年11月6日まで)

出所:東京証券取引所データに基づき楽天証券経済研究所が作成

 先週末(2020年11月6日)時点で、裁定売り残は、2兆380億円もあります。一時約2.6兆円あった時と比べると減ってはいますが、なお投機筋(主に外国人)が、日本株に弱気で、日経平均先物の売り建てを積み上げていることがわかります。

 注目いただきたいのは、上のグラフに、矢印を書き込み「踏み上げ」と書いてあるところです。2か所あります。2019年10~12月と、2020年6~8月です。ともに、日経平均が大きく上昇した後、裁定売り残高が大きく減少しています。ここで、「踏み上げ」が起こっています。

 日経平均が下落すると予想して売り建てを積み上げていた投機筋(主に外国人)が、日経平均がどんどん上昇していくため、損失拡大を防ぐために先物の買い戻しを迫られたと考えられます。

 先ほど、お見せした表で外国人投資家が2020年6~8月に日経平均先物を約1.2兆円買い越していることを思い出してください。裁定売り残高が2020年6~8月に約1兆円減っているのは、外国人投資家が6~8月に先物を買い戻したことと符合します。

 11月には、再び「踏み上げ」が起こっていると推定しています。ただ、11月6日まで見ても、裁定売り残高は減少していません。ということは、6日までは踏み上げは起こっていないことになります。

 私は、今週に入ってから「踏み上げ」が起こっていると推定しています。外国人が先物を買い戻したか、あるいは、売り過ぎた株式現物を買い戻したか、どちらかと考えられます。実際どうだったかは、後日、売買統計が出ればわかります。それは、後日、報告します。