今週、「踏み上げ」が起こっていると推定
11日の日経平均は、前日比444円高の2万5,349円でした。これで11月に入ってから7営業日連騰で、合わせて2,372円(10.3%)上昇しました。「来年にかけて世界景気の回復が加速する可能性が高まったことを織り込む動き」と私は考えています。
ただ、今週(9・10・11日)の日経平均3連騰について、私は特殊な需給要因が働いていると考えています。先物の「踏み上げ」【注】が起こっていると、推定しています。
【注】踏み上げ
日経平均が下落すると予想して日経平均先物の売り建てを積み上げていた投機筋(主に外国人)が、日経平均がどんどん上昇していく中で、損失拡大を防ぐために日経平均先物の買い戻しを迫られること。
それが、東京証券取引所が発表している「裁定売り残」の推移から読み取れます。詳しい説明に入る前に、まず、今年の外国人の日本株・日経平均先物の売買動向をご覧ください。
外国人投資家は今年、ほぼ一貫して日本株を売り続けてきた
外国人投資家は10月まで、株式現物を売るだけでなく、日経平均先物の売り建ても増やしてきました。
外国人投資家の日本株式現物および日経平均先物の売買動向と、日経平均騰落率:2020年1月~10月

外国人は8月には株式現物・先物そろって買い越していますが、それ以外の月はほぼ一貫して売り越しを続けています。今年1月から10月まで通算すると、株式現物を5兆3,995億円、日経平均先物を1兆1,695億円も売り越しています。
注目していただきたいのは、日経平均先物の売買動向と日経平均騰落率です。
【1】1~3月:外国人売りで日経平均急落
外国人は1~3月、日経平均が急落する中で、日経平均先物を大量に売っています。外国人の売りが日経平均を急落させたことが、わかります。
【2】4~5月:外国人の売り続くも日経平均は急反発
4~5月、日経平均が急反発する中でも、外国人は先物売りを続けています。
【3】6~8月:外国人は先物買い戻し
6~8月になると、外国人は先物を合計約1.2兆円も買い戻しました。ここで、「踏み上げ」が起こったと考えられます。じりじりと上昇が続く日経平均を見て、先物空売りを積み上げていた外国人が、買い戻しを迫られたと考えられます。
【4】9~10月:外国人が再び先物を売り越し
9~10月に外国人は再び先物を売り越しています。日経平均の上値が重くなってきたので、再び、日経平均下落を期待して先物の売り建てを増やしたと考えられます。
ところが、11月はご存知の通り、これまでに日経平均が7連騰して+10.3%も上昇しています。まだ売買統計が出ていないのでわかりませんが、空売りを積み上げていた外国人が11月は先物の買い戻しを迫られていると推定されます。
裁定売り残に表れる、投機筋の日経平均先物「空売り」の動向
詳しく説明すると難解になるので、説明は割愛して結論だけ述べます。東京証券取引所が発表している「裁定売り残」の変化に、投機筋(主に外国人)の日経平均先物「売り建て」の変化が表れます。売り建てが増えると裁定売り残が増え、売り建てが減ると裁定売り残が減ります。以下をご覧ください。
日経平均と裁定売り残の推移:2018年1月4日~2020年11月11日(裁定売り残は2020年11月6日まで)

先週末(2020年11月6日)時点で、裁定売り残は、2兆380億円もあります。一時約2.6兆円あった時と比べると減ってはいますが、なお投機筋(主に外国人)が、日本株に弱気で、日経平均先物の売り建てを積み上げていることがわかります。
注目いただきたいのは、上のグラフに、矢印を書き込み「踏み上げ」と書いてあるところです。2か所あります。2019年10~12月と、2020年6~8月です。ともに、日経平均が大きく上昇した後、裁定売り残高が大きく減少しています。ここで、「踏み上げ」が起こっています。
日経平均が下落すると予想して売り建てを積み上げていた投機筋(主に外国人)が、日経平均がどんどん上昇していくため、損失拡大を防ぐために先物の買い戻しを迫られたと考えられます。
先ほど、お見せした表で外国人投資家が2020年6~8月に日経平均先物を約1.2兆円買い越していることを思い出してください。裁定売り残高が2020年6~8月に約1兆円減っているのは、外国人投資家が6~8月に先物を買い戻したことと符合します。
11月には、再び「踏み上げ」が起こっていると推定しています。ただ、11月6日まで見ても、裁定売り残高は減少していません。ということは、6日までは踏み上げは起こっていないことになります。
私は、今週に入ってから「踏み上げ」が起こっていると推定しています。外国人が先物を買い戻したか、あるいは、売り過ぎた株式現物を買い戻したか、どちらかと考えられます。実際どうだったかは、後日、売買統計が出ればわかります。それは、後日、報告します。
需給主導の上昇がしばらく続く可能性がある
以上の投機筋のポジション分析から、今後の日経平均の行方を考えてみます。投機筋の先物売り建てはまだ高水準なので、日経平均先物の買い戻し圧力がかかりやすい、つまり「踏み上げ」が起こりやすい状況が続いています。したがって、目先は、需給面から日経平均が上昇しやすい状況と考えられます。世界でよほど大きなショック・イベントが起こらない限り、日経平均の上昇が今しばらく続く可能性があります。
ただし、今、述べているのは、投機筋のポジション分析だけです。株は、短期では投機筋の売買で動きますが、長期はファンダメンタルズ(景気・企業業績)で動きます。私は、景気回復を織り込む動きが始まっていると考えていますが、まだ足元のファンダメンタルズ改善が続くか不透明要因は残っています。
つまり、投機筋主体の日本株買い戻しはまだ続きそうですが、ファンダメンタルズの変化を受けて、実需(海外の年金ファンドや国家資金ファンド)が本格的に日本株を買い始めるのは、来年以降になると思います。
当面、投機筋の売りポジションと、ファンダメンタルズ(景気・企業業績)の変化の両方を見ながら、日本株への投資を考える必要があります。日本株は割安で、長期投資で買い場と考えていますが、短期的にはしばらく乱高下が続きそうです。
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