値上がり率ランキング(5銘柄)

1 バリュエンスHD(9270・東証マザーズ)

 決算サプライズで10月の値上がり率トップにランクイン。まずは月初、前2020年8月期の業績予想の上方修正でストップ高に。営業利益を従来予想2.4億円→6.3億円に大幅増額。これでも前期比では7割減ですが、新型コロナ影響で買取店舗の一部休業をするなかでも想定以上に仕入れが順調、地金の販売も好調だったことが寄与したようです。

 さらに上昇第2弾は、15日に発表した2021年8月期の業績予想のサプライズで発現。今期の売上高を前期比53%増、営業利益を同4倍の大幅増収増益見通しを開示したことで、ここでも翌日ストップ高に。株価の大幅上昇で、11月より厳格化したマザーズ→東証1部昇格基準をクリアできる数少ないマザーズ銘柄にもなっています。

2 リバーエレテック(6666・ジャスダック)

 10月にテーマ株物色が盛り上がった5G関連の小型株として人気化し、2014年12月以来となる株価1,000円台に。人気化のきっかけは、19日に発表した水晶振動子の製造ライン増設でした。5Gの普及によって、電子機器の電源管理で使われる「音さ型水晶振動子」の小型化の需要増が見込まれるため、設備増設で安定した供給体制の構築を進めると。

 稼働開始は来年6月とのことですが、今回のリリースを通じて5G普及の恩恵を享受する電子部品メーカーと認知されました。小型の材料株ということもあって、個人投資家の物色対象に加わったようです。

3 GMO-FG(4051・東証マザーズ)

 7月上場の直近IPOですが、他の直近IPO株の人気離れが止まらないなか、GMO-FGの独壇場といった雰囲気になりました。上場直後の決算発表時に上方修正していたことで業績評価が高いこと、人気のGMOグループであること―などは言えますが、そうした理由よりも、流動性とモメンタム面の優位性で、短期勢の投機の対象になっただけにも思えます。

 というのが、上場来高値を付けた15日の引け後、東証が信用規制(委託保証金率を50%以上、そのうち現金を20%以上)をかけました。そして東証の信用規制を受け、翌16日から急落。信用で買っていた個人投資家の比率が圧倒的に高い銘柄だと分かります。

4 不二硝子(5212・ジャスダック)

 時価総額わずか30億円程度ということもあり…5G関連の超小型株として、一部の個人投資家が好んで触る仕手系材料株のような存在に。動意づいたのは8月からで、8月に月間騰落率3.1倍を記録。その翌月の9月は見向きもされず、同▲40%と急落。

 そして10月は、5G関連のテーマ株物色が盛り上がったことを受けて同+46%で再浮上。買い手のメインは個人投資家、かつ信用買いであることも一目瞭然です。信用買い残は23日時点で10万7300株と、上場来で最大に積み上がっています。1年前の信用買い残は2,800株程度の銘柄ですので、個人の信用買いのしこりが短期間で大きくなり過ぎた気も…。

5 ニッポン高度紙工業(3891・ジャスダック)

 3カ月前(第1四半期の決算発表後)の再来、好決算をきっかけに値幅制限いっぱいまで買われました。22日、第2四半期の決算発表と合わせて、今期の業績予想を上方修正。営業利益を9億円→19億円に変更、倍増以上の増額がサプライズに。

 コンデンサー用セパレーターがデータセンターや5G関連向けで堅調に推移しているとのことで、5G関連の切り口がある点も10月の地合いとマッチしたようです。

11月に注目したい新興株の動き

 4年に1度の米大統領選挙。ここでまたサプライズが発生しました。事前の世論調査で民主党のバイデン氏勝利が有力視されていましたが、ふたを開けてみると現職のトランプ氏が激戦州のフロリダ州などで勝利したと報じられました。開票速報を反映した4日の東京時間、トランプ氏の再選あるか? を意識したマーケットで起きたことは…“マザーズ爆上げ”でした。この日の東証マザーズ指数は+5.3%で、5月7日以来、半年ぶりの上昇率に。地合いが豹変した10月後半の鬱憤(うっぷん)を晴らすような展開でした。

「大統領選、上下院選の全てで民主党が勝つ“ブルーウェーブ”→財政出動→景気回復期待(財政悪化懸念)」を先取り、米長期金利が0.9%台まで上昇していたことを思えば、金利上昇圧力が後退したことはマザーズ銘柄に代表されるグロース株にポジティブ。キャピタルゲイン課税の増税懸念などは、米グロース株の利食い売りに直結する話ですので、この点でもグロース株にはポジティブです。まだ、決着していませんが…(5日時点)。

 中央銀行の流動性供給が担保されている以上、株から資金が抜けるというより、どういう株のウエイトが高められるか? が焦点となります。よく言われるところでは、バリューか? グロースか? というやつですね。そういう意味では、“グロース株売り→バリュー株買い”の壮大なリバーサル相場が起きる確率が低下したことは、マザーズなど新興株市場にとって好都合です(まだ決着したわけではないですが)。日経平均が上がって、オールドエコノミーのバリュー株が上がって、マザーズが下がる、そんな地合いは多くの日本の個人投資家が望んで無さそうですし…。

 大統領選だけ抜き取れば、最悪のシナリオを回避したように見えます(まだ決着したわけではないですが)。欧米でコロナ感染が再拡大しており、ウィズコロナで進んだデジタル化の推進が止まるわけでもありません。マザーズ株が優位に立つカタリストは生きています。ただ…10月後半の地合い悪化の影響は尾を引く可能性があります。理由は、最大の買い材料(優位性)だった「モメンタム」が壊れた(=チャートが綺麗ではなくなった)ことです。

 株価のモメンタムを理由に集まってきた資金が多く、上値追い時は好循環で相場が作られるわけですが、下落時には含み損の株が増えます。その含み損株のロスカットで株価がさらに崩れたというのが理屈ですが、実際は、10月第3週(マザーズ指数の週間騰落率▲4.9%)にしても個人投資家はマザーズを大幅に買い越していました。ロスカットした分以上に、値ごろ感から逆張りで買い向かった分が多かったということです。投資意欲が旺盛で、逆張りの資金も潤沢なのは頼もしい一方、上値で個人投資家の信用買い残が積み上がったのも事実。

 10月高値に向けた優良地合いの時期と異なり、現値より高い水準で買って“戻り売り待ち”状態のポジションが多くなっているわけです。11月4日のように、売買を膨らませながら(戻り売りを吸収しながら)上昇する展開が続けばいいですが、こんな日が続くとは到底思えないわけで…。10月後半に多発した、短期的な地合い悪化(マザーズ指数の下落)局面で、人気銘柄(直近IPO株やテーマ株)が狼狽(ろうばい)売りで大きく下がる動きを引き起こす条件を備えています。

 海外ヘッジファンドにも、信用買い残の多い銘柄を中心に「日本のマザーズ株は、空売りで足元さえポンと崩してしまえば、ロング過多の反動で簡単に崩れる」といったことが周知されたはず。マザーズ市場の場合、時価総額上位の主力株であっても、ファンダメンタルズ的な根拠が無いほど時価総額を肥大化させた銘柄ばかり。そうした市場のモメンタムが壊れた意味は大きいと思います。個別銘柄ベースでいえば、「直近の信用買い残が、発行済み株数や普段の出来高(例えば5日移動平均出来高)に対してどの程度積み上がっているか?」…最低限ですが、確認してからエントリーするか判断してください。