需給の動きが一巡すれば、買いの勢いが弱まることが予想される

 当然ながら、今後の焦点は「足元の上昇の勢いがどこまで続くのか?」になります。そこで、まずは勢いの強さから見ていきます。

■(図2)日経平均(日足)のボリンジャーバンド (2020年11月6日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図2は日経平均(日足)のボリンジャーバンドです。先週の日経平均は、▲2σ(シグマ)から+2σへと向かい、その後も広がりつつあるバンドの幅に沿って上昇していきました。

 株価に強いトレンドが発生すると、拡大するボリンジャーバンドの±2σに沿って動くことが多く、実際にチャートをさかのぼると、5月下旬からの上昇局面や、2月下旬からの下落局面のトレンド発生時でも見られます。

 今回もバンド幅の拡大に伴って株価が上昇していく可能性があり、その場合、株価は+1σと+2σの範囲内を中心に株価が推移していきます。

 そして、トレンドが一服する判断サインとして、「株価が+1σを下抜ける」、もしくは「反対側の▲2σの線の向きが変わる」の2つをチェックします。直近の5月と2月の例でも、これらのサインの出現によってトレンドが終了しています。

 もっとも、先週の株価上昇の勢いについては、買い戻しの動きによってもたらされた面があることに留意する必要があります。

 具体的に見ていくと、米大統領選挙前は、大統領および議会(上院・下院)のすべてで民主党が勝利する、「トリプル・ブルー」のシナリオが強くなっていました。強力な民主党政権の誕生は、増税や規制強化が意識されることになり、株式市場にとってネガティブな影響があると見込まれるため、こうした状況を警戒する売りポジションが先物取引を中心に一定数存在していたと思われます。それが、選挙の開票作業が進むにつれて、上院議会は共和党が優勢と報じられたことで、いわゆる「ねじれ」の可能性が高まりました。

 これを受けた株式市場では、「ねじれとなれば、警戒されていたほど増税や規制強化が進まなくなるのでは」という安心感が広がって買いが入り、さらに、それに伴う売りポジションの解消によって、上昇に拍車が掛かったと考えられます。

 そのため、需給の動きが一巡すれば、買いの勢いが弱まることが予想され、さらに株価が上昇していくには、現在の株価水準を正当化できる理由や、米新政権への期待感などが必要になってきますので、引き続き、新型コロナウイルスの感染状況をはじめ、企業決算や為替市場の動向を見極めていくことになりますし、また、米国選挙の勝敗は決しつつありますが、選挙によってもたらされた米国社会の混乱や分断は残ったままですので、「アフター選挙」の動きも市場のムードに影響を与えそうです。

 2017年以降の日経平均は2万4,000円台乗せのところで何度となく跳ね返されてきた経緯もあり、冷静に考えれば、上昇が一服しそうです。その場合は、2万4,000円台の維持や、先週上抜けてきた25日移動平均線が下値の目安として意識されそうです。

 冒頭では、日経平均が終値ベースの高値を29年ぶりに更新したと述べましたが、実は、取引時間中の高値は2018年10月2日の2万4,448円だったりするので、上値をトライするにはまずはここを超えられるかが最初のハードルになります。