裁定売り残高が拡大、投機筋の売り建てが積み上がる

 裁定買い残高だけでなく、裁定売り残高の推移も同時に見る必要があります。詳しい説明は割愛しますが、裁定売り残の変化に、投機筋(主に外国人)の日経平均先物「売り建て」の変化が表れています。

 売り建てが増えると裁定売り残が増え、売り建てが減ると裁定売り残が減ります。

日経平均と裁定売り残の推移:2018年1月4日~2020年10月20日(裁定売り残は2020年10月9日まで)

出所:東京証券取引所データに基づき楽天証券経済研究所が作成

 2020年10月9日現在、裁定売り残高は、約2兆円まで積み上がっています。一時約2.6兆円あった時と比べると減ってはいますが、なお投機筋(主に外国人投資家)が、日本株に弱気で、日経平均先物の売り建てを積み上げていることがわかります。

 注目すべきは、10月9日時点で裁定買い残高が4,588億円しかないのに、裁定売り残高が、2兆円まで増えていることです。売り残が買い残より1.5兆円も大きくなっています。投機筋が、日本株に弱気を継続していることがわかります。

 注目いただきたいのは、裁定売り残のグラフに、矢印を書き込んでいるところです。ともに、日経平均が大きく上昇する中で、裁定売り残高が減少しています。ここでは、いわゆる「踏み上げ」が起こっています。

 日経平均が下落すると予想して売り建てを積み上げていた投機筋(主に外国人)が、日経平均がどんどん上昇していくため、損失拡大を防ぐために、日経平均先物の買い戻しを迫られていることがわかります。

 6月以降、裁定売り残高が、約1兆円減っていますが、これは、外国人投資家が6~7月に日経平均先物を約1兆円買い越しているのと符合します。

 それでは、日経平均に、裁定買い残と売り残を両方つけた、以下のグラフを見てください。投機筋(主に外国人)は、今のところ日本株に弱気を継続していることがわかります。

日経平均と裁定買い残・売り残の推移:2018年1月4日~2020年10月20日(裁定売り残・買い残は2020年10月9日まで)

出所:東京証券取引所データに基づき楽天証券経済研究所が作成