【疑うべき運用常識2】資金の使途別に異なる運用を用意すべきだ

 資金の使い道別に、資産運用を行わなければならないという考え方は完全におかしい。なぜならば、お金の使い道は後から自由に変更することができるからだ。

 使い道を後で柔軟に決めることが出来る柔軟性はお金の大きな長所だが、狭義の資産運用だけではなく、保険の意思決定にあっても意識すべきだ。各種の生命保険も、がん保険のような医療保険も、「平均的には」加入者にとって相当に不利な賭として設計されている(そうでないと、保険会社が潰れてしまう)。十分な金融資産を持っていれば保険は不要だ。保険に入ったつもりで、保険料相当額を貯蓄ないし投資している方が、保険に入るよりも遙かに賢い場合が多い。

 普通の人にとって、生命保険が必要なのは、貧乏な夫婦に子供が生まれた場合くらいだ。この場合、一家の稼ぎ手が、最小限の死亡保障の保険に入ることを検討してもいい(10年かせいぜい20年程度の掛け捨ての保険で余計な特約のないシンプルで保険料の安い物を選ぶべきだ)。

【疑うべき運用常識3】リスクの大きさに応じて投資すべき運用商品は異なる

 リスクの大きさのコントロールは、投資対象となる運用商品の種類ではなく、リスク資産に投資する金額でコントロールするのが、正しい。

 同じ期間にあって、負担するリスク当たりの期待リターンが最も良い資産があれば(現実的には二、三の資産の組み合わせだろうが)、大きなリスクを取りたい人も、小さなリスクにとどめたい人も、投資すべき対象は同じだ。異なるのは、投資金額だけである。

 この点は、運用を考える上で盲点になりやすい。

【疑うべき運用常識4】運用資金の大きさによって、運用内容は異なる

 運用にあって、お金にはスケールの自由度がある。たとえば、100万円株式を持つのも、1億円株式を持つのも、同じ時期に同じ銘柄を持つのであれば、リスクとリターンは基本的に同じだ。

「庶民」と「お金持ち」で適切な運用内容が大きく異なるかというと、案外そうではない。お金持ちの方が分散投資の自由度が少々大きいことと、悪い金融マンが寄って来やすいことに差がある程度の違いだ。両者にとって適切な運用は、金額に差があっても、内容的には同じでいいはずだ。