長期投資家ほど、GPIFへの悪口を反面教師にしよう

 もし、あなたの運用方針が長期投資家を志向しているのなら、GPIFへの悪口は基本的に反面教師としてたくさんの示唆を得られるでしょう。

 下がったときだけ批判をし、回復・上昇に転じたときはそれを無視するというのは運用状況をチェックする際におかしなルールです(個人の場合は逆に、損失が生じているときだけ見て見ぬふりをし、ときどき上昇をしたときだけ自分を褒めるような人もいますが、これもおかしなルールです)。

 また、「含み損」の概念がない投資に関するニュースも疑ってかかることが必要です。それが実際に売って確定させた損失なのか、保有資産に対する時価評価によるものなのかはきちんと峻別(しゅんべつ)して議論するべきです。

 GPIFについていえば、3月末に全資産を売って17.7兆円の損を出したわけではなく、そのほとんどすべては保有銘柄の時価の減少によるものです。そして6月末にはほとんどすべての収益を時価の回復によって得ています。極端な話「何もしていなくてもそうなる」類いのものです。

 長期投資家として資産形成を行う場合は、「売っていないが、値下がりして含み損」という状況ときちんと向かい合いつつ、「売っていないが、値上がりした含み益」という状況とつきあっていくスキルが欠かせません。

 特にさらなる値上がりの可能性、値下がり時期の終わりを乗り越えていくために、長期投資家は「持ち続けていく」ことが必要だからです。

 そして、そのマイナスは一時的なものであってこれから市場の回復可能性があるのか、という点で納得が得られるのであれば、含み損は許容されます。そしてむしろ、積立投資による新規購入の継続は好機といえます。

 今回のGPIFのニュースになぞらえれば、「3月末に絶望して、6月末に大喜びする」ことを長期投資家はしないのです。

 本サイトをご覧になっている読者の多くは、GPIF批判のニュースが的外れだと言うことをご承知だと思いますが、ぜひ自身の運用方針を強固なものとするために、今回のニュースを肥やしとしてほしいと思います。