赤字の増加は経済成長率の低下につながる
カネをばら撒くより、減税をやって消費を刺激し、企業の利益も増え税収も増えていく好循環に持っていくべき。シュンペーターは政府から十分な支援を得てしまえば資本主義は停滞すると信じていた。赤字の増加は経済成長率の低下を促している。
以下は、「A Permanent Shift In Valuations?(バリュエーションにおける恒久的な変化)」(9月13日 ゼロヘッジ)という記事の抜粋である。
下のグラフは、歳入を上回る「過剰な」政府支出の累積増加を示している。名目GDP(国内総生産)成長率の上昇が止まった地点に注目して欲しい。また、バリュエーションが上昇に転じた地点でもある。
米政府支出の累積増加
この変化は、政府がいつから一貫して赤字を出し始めたかを見れば、より明確に分かる。赤字の増加は、経済成長率の低下と直接相関している。
赤字の増加は、経済成長率の低下と相関している
経済のレバレッジ(企業、消費者、金融、政府の債務)が記録的な水準にあり、上昇していることを考えると、(インフレ率の上昇につながる)より強固で持続可能な経済成長を生み出す能力は、依然として希望に満ちた目標にすぎない。
バリュエーションが恒久的に上向きにシフトしたという考え方の問題点は、1990年から2000年にかけての市場の異常性が、長期的な中央値を上回るバリュエーションを生み出したことである。しかし、経済成長が長期的には2%以下で推移していることを考えると、将来的には平均的なバリュエーションの範囲が低くなり始めると考えられる。
出所:「A Permanent Shift In Valuations?」 9月13日 ゼロヘッジ
米国の負債の始末は、いずれドル安誘導によって対処されるだろう。ドル安誘導(ドルの切り下げ)をすれば、米国の借金は他国のバランスシートに移すことができる。ドルの価値を半分にすれば、米国債で調達している他国からの借金も半分になる。
いずれにせよ、米国経済は政府支出(主に非生産的な無償の給付あるいは無益な戦争)とFRB(米連邦準備制度理事会)の膨れ上がるバランスシートに完全に依存するようになるだろう。
「金本位制という制度下でなければ、インフレーションという名の略奪から我々の資産を守ることはできない」というグリーンスパンの警鐘
財政赤字の大きさを懸念しているのは、元FRB議長のアラン・グリーンスパンも同じである。
グリーンスパンは9月10日のCNBCに出演し、「私たちはある種のことを学ぶことができますが、株価や債券価格などを生み出す力についての真の洞察を得るには十分ではありません。つまり、私たちは退職者層の驚異的な規模の拡大について、多くの知識を持っていると思いますが、どちらかといえば、この先の財政赤字の大きさを過小評価しているのではないでしょうか。財政赤字が膨らんでいることが最も大きな懸念です」と、述べた。
バブルの崩壊を新たなバブルで救済するという手法をとってきた元FRB議長のアラン・グリーンスパンは、FRB議長を退任した後は、度々バブルに警鐘を鳴らすようになった。元々、グリーンスパンは金本位制論者であり、『金と経済的自由』という論文のなかで「金本位制という制度下でなければ、インフレーションという名の略奪から我々の資産を守ることはできない」と述べている。
金本位制でなければ通貨の発行量に歯止めがなくなる。それが、資産バブルや悪性インフレになるとやっかいだ。彼は回顧録の中で、「FRB議長時代はドルの暴落が一番心配だった」と述べている。いずれにせよ、リーマンショック時は金融バブルの戦犯扱いされていたグリーンスパンは、FRB議長退任後はまともなことを言うようになった。グリーンスパンが<史上最大のバブル>と言われる債券バブルの行く末に懸念を表明している。
米国の金利史1790年~2020年