9月に注目したい新興株の動き

 1年で最もマザーズのパフォーマンスが悪い8月を、まさかのマザーズ指数月間17%上昇で通過。経験則が全く通じないのは、コロナ禍で個人投資家が急増した影響が大きいと思います。米国でもロビンフッダーの投資行動が分析され始め、機関投資家も「彼らがどう動くか」を考えながら動かざるを得なくなったと聞きます。日本でも全く同じ、プロの市場参加者も個人投資家を強く意識しています。流動性が飛躍的に上がったため、マザーズ銘柄にヘッジファンドもかなり参戦していると思われます。マザーズの直近IPO銘柄が、東証1部の上位銘柄並みになっているのは、彼らのアルゴリズム売買が活発化していることを示しています(それだけに板が厚くなって、突然の急落などが起こりにくくなった)。

 これまでに経験が無い状態…まさに「ニューノーマル」相場ですね。個人投資家の急増で、ゲームチェンジしています。コロナワクチンの進展のニュースなどがあると、最近は景気回復期待でバリュー株(日本でいえば銀行、空運、陸運、海運、鉄鋼株など)が買われる場面が多くなってきました。そういう地合いはマザーズには逆風。割安なバリュー株がゴロゴロしており、物色の幅は広がります。でも、多くの個人投資家は見向きもしない…。この数カ月、マザーズ株ばかり売買してきた投資家が、急にオールドエコノミーな株を買おうとはならないんですよね。バリュー株の上げが止まったら(グロース株が上がり始めたら)、「次の一手もマザーズ銘柄で!」と身構えている人ばかりです。

 日本の場合は米国と違い、GAFAMやテスラのようなグロースで支持されている大型株が少ないです(任天堂、ソニー、エムスリー、チェンジなど数銘柄?)。グロース株を買おうと思えば、自分好みのマザーズ銘柄を選ぶ…そのマザーズ市場の時価総額は、過去最大になったとはいえ8.3兆円です。これ、東証1部でいえば、中外製薬(7.8兆円)や任天堂(7.8兆円)1銘柄くらいのサイズ。その市場が、1日に2,000億円以上の売買代金を安定してこなしているわけです。これ、凄いことです。

 今の適温相場は、金利の低位安定と、米国の巨大テック株への資金流入で形成されています。米金利が上がらないこと(=米グロース株が急落しないこと)―この1点に世界中の投資家が集中し、バブル的であることを誰もが知りつつ、足を突っ込んでいる状態です。今のところ米金利が大きく上がるカタリストなど無いと思いますが、どうでしょうか…。なお、安倍政権の終焉(しゅうえん)は影響ゼロでしょう。

 日本独自の要因でいえば、9月後半は需給的に注意すべき時期に。9月17日の雪国まいたけから始まり、月末30日までにIPOが9社予定されています。10月6日には資金吸収額が3,000億円を超えるキオクシアのIPOも控えています。もっと資金吸収額が大きいのは、ソフトバンクの売り出し(PO)。資金吸収は9月中旬ですが、国内分だけで9,000億円超に及びます。こうした募集モノに個人投資家の資金が拘束されることが、マザーズ市場の流動性低下要因になることが考えられます。ここに注意! と心の準備はできますが、これもあくまで過去経験則での話。今の「ニューノーマル」相場には心配無用なのかもですが…。