8月の新興株<マザーズ、ジャスダック>マーケットまとめ

 7月はコロナラリー以降で初の調整となりましたが、8月に入ると月初から反転上昇。ただ、月前半は日本の新興株も上値の重い展開。これは、コロナワクチンの進展による景気回復への期待から、米国でこれまで不人気だった景気敏感系のバリュー株が賑わう場面を作ったため。ただ、これも長続きせず、GAFAMを代表とするグロース株優位のサマーラリーに。金利が低位安定し、米国ではグロース株が上昇…これを適温相場の形として、日本の新興株にも上値追いの機運が広がりました。

 低金利の長期化により、クオリティを求める世界の機関投資家の資金が、債券からクオリティ株へと流れ続けています。債券の代わりとなる資金の受け皿ですので、時価総額が大きく、流動性の高い巨大テック株に資金が集中します。米国ではGAFAMです。GAFAMの上昇とゴールド(金)の上昇が相関関係にあったのも、同じ原理だと思われます。日本でも基本的には同じようなフローがあったと見られますが、日本市場にはGAFAMがありません。個人投資家の参加が増えていることもあり、各々が好むグロース株を選別していくと、その対象がマザーズ銘柄に多かったという側面もありそうです。

 指数別の8月の月間騰落率は、日経平均株価が+6.6%、TOPIX+8.2%、日経ジャスダック平均は+5.0%と全指数が上昇。ただ、マザーズ指数は+17.1%と断トツ。とくに同じ新興株のジャスダックを圧倒するパフォーマンスを続けている理由は、“流動性”以外見当たりません。例年、8月はお盆休みなどもあって売買が減る時期。東証1部は完全に夏枯れモードでしたが、その中で、お盆休み以降に売買が急増したのがマザーズ市場でした。極まったのが24日。この日のマザーズの売買代金は、東証1部に対する比率で21.1%を記録しました。わずか8兆円の市場の売買代金が、600兆円の市場の売買代金の2割を占める…これ、マザーズ市場創設以来で最高比率でした。

 そして、この流動性急上昇の立役者になったのがIPO(新規公開株)でした。マーケットで一番人気のテーマが「直近IPO」、6月以降に上場した直近IPOを順繰り物色する展開に。なかでも、とくに新しいティーアンドエスが公開価格の10倍高(テンバガー)を、初値が付いて10営業日で達成。これが刺激となって、次に上場したニューラルも公開価格の10倍高を、同4営業日で達成。IPO株が2社連続テンバガーという、後世に語り継がれる快挙を成し遂げました。

8月の売買代金ランキング(人気株)

 新興市場でも「マザーズだけ」すごい、これが今年のサマーラリーの特徴。売買代金ランキングのトップ20のうち、マザーズが18銘柄でした。8月のマザーズ市場の1日当たり売買代金は2,350億円と、前月の1,902億円と比べて24%も増加しました。一方で、ジャスダック市場の1日当たり売買代金は440億円で、前月の633億円と比べて30%減少。「新興株の人気がある」とか、「中小型株の人気がある」というわけではなく、「マザーズだけ大人気」が適切な表現ですね(笑)。

 流動性が焦点になると、自分がいいと思う株を買うより、他人が買いそうな株を買う(いわゆる美人投票)ほうが効率がいい…8月のマザーズ市場で起きていたのは、まさにそういうことだったように思います。なお、このランキング表は「売買代金25日移動平均」で作成しています。そのため、上場して25営業日経過していない銘柄は含まれません。短期資金がこの時期最も群がったのは、直近IPO銘柄でした。なかでも、市場を席巻したのは、最初にテンバガーを達成したティーアンドエス。この銘柄の初値が付いたのは11日で、そこから月末31日まで15営業日でした。その間の売買代金15日移動平均は「244.9億円」! トップのPSSのほぼ2倍の大商いでした。

市場 コード 銘柄名 8月末
終値
時価総額
(億円)
売買代金
25日移動平均値
(億円)
月間
騰落率
東証マザーズ 7707 PSS 1,600 422 123.2 -18.6%
東証マザーズ 4477 BASE 9,130 1,866 107.1 40.9%
東証マザーズ 4385 メルカリ 4,810 7,522 99.5 8.8%
東証マザーズ 4563 アンジェス 1,510 1,857 88.3 5.1%
東証マザーズ 3911 Aiming 705 278 76.1 -20.4%
東証マザーズ 2160 ジーエヌアイ 2,500 1,085 56.9 88.8%
東証マザーズ 4479 マクアケ 10,500 1,225 53.0 19.9%
東証マザーズ 6095 メドピア 4,695 1,005 46.4 41.4%
東証マザーズ 6027 弁護士コム 10,850 2,416 41.7 16.8%
東証マザーズ 3689 イグニス 3,095 484 41.0 80.2%
東証マザーズ 4051 GMO-FG 12,570 491 40.9 67.6%
ジャスダック 2191 テ ラ 1,213 284 39.2 -2.3%
ジャスダック 7564 ワークマン 9,140 7,481 37.5 -8.0%
東証マザーズ 4488 AIinside 45,400 1,691 35.8 42.1%
東証マザーズ 3558 ロコンド 3,725 427 29.8 39.9%
東証マザーズ 4480 メドレー 4,545 1,312 29.3 51.8%
東証マザーズ 4393 バンクイノベ 3,800 150 28.5 99.5%
東証マザーズ 3998 すららNT 5,790 367 26.7 66.4%
東証マザーズ 3542 VEGA 3,250 343 26.0 70.0%
東証マザーズ 7094 NexTone 11,240 346 25.1 51.9%

売買代金ランキング(5銘柄)

1 PSS(7707・東証マザーズ)

 売買代金が急増したのは、戻り高値を付けた4日まで。この日の出来高2,018万株は、今年最大でした。7月後半に、新型コロナ検査用全自動PCR検査装置とPCR試薬を8月から販売開始すると発表。そこから始まったリバウンド局面で商いを膨らませましたが、上昇モメンタムが途絶えると売買代金は急減しました。上がるなら買う、という短期勢の信用取引が中心だったと言えます。

 市場の関心は、28日に予定していた本決算発表に。「全自動PCR検査装置が同社業績にどういう影響を与えるか?」2020年6月期の着地数字、そして2021年6月期の業績予想に大いなる期待が乗っていたのですが…会社側が発表した2020年6月期は売上高が15.7%増の50.6億円、営業損益は0.8億円の赤字(前期は1.6億円の黒字)。通期予想は、売上高が52%増の77億円、営業利益5億円の黒字でしたが、市場の大いなる期待は下回ったということのようです。発表翌日31日は前日比▲18.9%の急落に。

2 BASE(4477・東証マザーズ)

 コロナ禍の巣ごもり消費、ECシフトのメリット銘柄として株価が急騰していたBASE。「さらに高値があったのか」という衝撃の展開で8月も月間40.9%の値上がり。株価は大台1万円乗せも果たしました。3月末の終値は1,089円ですので、5カ月でほぼテンバガー、時価総額も2,000億円に迫るマザーズの主力銘柄に変貌しました。

 14日に発表した2020年6月期中間決算は、売上高が前年同期比2.2倍、営業損益が6.12億円黒字(前期は1.3億円の赤字)の好決算でした。コロナ禍でショップ開設数、流通総額が大幅に伸びたようです。さらに、通期予想も大幅増額。売上高予想のレンジ上限を従来の55.4億円から81億円に引き上げ。17日にオンラインで開催した決算説明会で、さらなる成長への意欲を示したこともあって、機関投資家も巻き込んだ相場になっているような凄みを感じます。

3 メルカリ(4385・東証マザーズ)

 日本でいう巣ごもり関連銘柄は、米国では「ニューノーマル銘柄」と呼ばれているそうです。コロナによる社会構造変化を好機とする大型テック株が驚くほど上昇する地合いにあって、日本のマザーズ時価総額トップのメルカリはど真ん中銘柄と認識されたのだと思われます。海外ファンドの大量保有報告もありましたので、機関投資家も参戦していたのは間違いないでしょう。

 6日に発表した本決算では、2020年6月期の売上高が前期比48%増762億円と、市場コンセンサス上振れ。とくに日本国内の流通総額が下半期から成長率を再加速させたようです。2021年6月期の期初予想は「未定」ですが、会社側では流通総額を国内で前期比20%以上、米国で50%以上の増加を想定していると。この決算を受けて、翌日の株価は+10.9%の想像絶する好反応。アナリストも米国での流通総額の急拡大がポジティブサプライズと評価していました。2018年6月のIPO直後に付けた株価6,000円が上場来高値…この値段に接近する展開になるとは、これが一番のサプライズです。

4 ジーエヌアイグループ(2160・東証マザーズ)

 コロナ禍では創薬ベンチャー株は不人気(ワクチン開発系除く)だったこともあり、ひさびさの覚醒といった8月の急騰劇でした。きっかけは、17日に発表した肝線維症治療候補薬のパイプライン「F351」に関するグッドニュース。フェーズ2試験が完了し、初期段階分析で良好な結果を得たと。この結果を踏まえた戦略的な方向性は9月下旬から10月初旬をメドに提示するようです。

 バイオベンチャーにとって一番の好材料に反応し、翌日から2日連続でストップ高。全株一致した20日の出来高1,508万株は、2017年6月20日以来の大商いでした。時価総額が1,000億円を超える創薬ベンチャー、これだけの急騰と大商いが発生したというのは、一見するとプロの買い(空売り買戻し含め)が相当入っているふうに見えます。ただ、実際は、ほとんど個人の信用取引だったようです。東証が27日から信用規制をかけました。つまりは買い注文の多くが信用の新規買い分だったということ。日本の個人投資家、凄まじい…。

5 GMO-FG(4051・東証マザーズ)

 店頭決済システムの運営を主力とする7月に上場したばかりの直近IPO銘柄。GMO冠する社名で分かるようにGMOグループですが、GMOの子会社のGMOPGの子会社(GMOの孫上場)です。公開価格は2,540円で、初値は2.5倍の6,550円。直近IPO株人気の波に乗った面が大きいとはいえ、初値の2倍近くまで上昇したのは圧巻でした。

 上場後の最初の決算発表は重要(業績予想の信頼度が問われるため)ですが、同社は11日に2020年9月期予想の上方修正を発表。売上高を従来予想の32.1億円から36億円へ、営業利益を3.3億円から4.5億円へ大幅増額しましたので、今後の決算発表にも期待感がつながりそうです。

8月の株価値上がり率ランキング

 7月にトーンダウンした個別株の勢いですが、8月に大復活。7月は月間で株価2倍になった銘柄がゼロでしたが、8月は4銘柄生まれました。マザーズ人気を示すように、値上がり率トップ20のうち15銘柄がマザーズ銘柄。前月比ですので、圧巻の急騰を見せた8月IPOは含まれません。直近IPOでは7月IPO以降ですが、7月上場のサンアスタリスクが月間+92%でランクインしています。

 短期で急騰する株を生みやすくしたように感じる制度変更もありました。この8月から、東証が値幅制限拡大のルールを変更。これまでは、「3日連続」で約定したまま午後の立会終了を迎え、かつストップ高水準で買い注文を残していた場合に、その翌日の制限値幅を「2倍」にしていました。これを、「2日連続」に判定期間を縮小し、制限値幅を「4倍」に拡大。結果、制限値幅4倍拡大を狙い、ストップ高に並ぶ注文が急増したように思います。個人投資家の個別株投資意欲が燃え盛るなかに、油を注いだかもしれませんね。

市場 コード 銘柄名 月間騰落率 8月末
終値
前月末終値 時価総額
(億円)
ジャスダック 5212 不二硝 213.9% 1,648 525 35
東証マザーズ 6579 ログリー 155.4% 3,695 1,447 69
東証マザーズ 3628 データHR 125.8% 3,895 1,725 139
東証マザーズ 7082 ジモティー 102.1% 3,200 1,583 181
東証マザーズ 4393 バンクイノベ 99.5% 3,800 1,905 150
東証マザーズ 6531 リファインバス 98.5% 1,568 790 48
東証マザーズ 4053 サンアスタリスク 92.2% 2,900 1,509 1,050
東証マザーズ 7037 テノ. 90.8% 1,168 612 54
ジャスダック 3540 Ciメディカル 89.6% 7,300 3,850 730
東証マザーズ 2160 ジーエヌアイ 88.8% 2,500 1,324 1,085
ジャスダック 3326 ランシステム 85.9% 777 418 16
ジャスダック 3803 イメージINF 80.4% 781 433 16
東証マザーズ 3689 イグニス 80.2% 3,095 1,718 484
東証マザーズ 4484 ランサーズ 77.4% 1,359 766 211
東証マザーズ 6567 SERIOHD 76.6% 1,600 906 51
東証マザーズ 7806 MTG 73.9% 1,195 687 475
東証マザーズ 3482 ロードスター 70.2% 800 470 172
東証マザーズ 3542 VEGA 70.0% 3,250 1,912 343
ジャスダック 6626 SEMITEC 68.3% 3,975 2,362 113
東証マザーズ 4051 GMO-FG 67.6% 12,570 7,500 491

値上がり率ランキング(5銘柄)

1 不二硝子(5212・ジャスダック)

 8月に変更された値幅制限拡大ルールが適用されました。25日と26日に2日続けてストップ高買い気配となったため、27日に制限値幅の上限が拡大。株価1,000円台の上限値幅は300円ですが、それが4倍ということは“1,200円”というわけです。全株一致した27日は一時2,218円(前日基準値1,027円)まで噴き上がり、この時点では前日比+116%に(終値では前日比+85.5%)。

 ちなみに、なぜストップ高が連発したのか? が謎のままでした。コロナのワクチン用の容器の引き合いが高まるという噂がきっかけと言われているようですが…。21日から動意付いたのですが、手前の時価総額はわずか10億円程度でした。低位の超小型株で、低流動性株に仕掛け的な買いが入って大相場になった、といったところでしょうか。

2 ログリー(6579・東証マザーズ)

 こちらも値幅制限拡大ルール変更が適用された急騰株。きっかけは12日に発表した今期予想の大幅な上方修正でした。今2021年3月期の売上高を32億円から38.7億円~40.8億円に、営業利益を0.5億円から1.4億円~2.0億円に大幅増額。コロナ禍の巣ごもり需要で、主力のネイティブ広告プラットフォームのインプレッション数が強烈に伸びているようです。

 翌日から2日続けてストップ高買い気配になり、17日に制限値幅が拡大。発表前の終値1,673円に対し、17日終値は3,145円と、上方修正一発で約9割上昇! 超絶好決算、そして発表前の時価総額が31億円の超小型株だったこと、あとは値幅制限拡大ルールも相まって、好決算の織り込みがますますスピードアップしてますね。

3 データホライゾン(3628・東証マザーズ)

 同じく、値幅制限拡大ルール変更が適用された8月の大化け株。年初来の安値圏にあった株価が動意付き始めたのは、4日に発表した2020年6月期予想の上方修正以降でした。コロナによる営業活動の制限などでコストが減少し、営業利益予想を2.2億円から2.6億円に増額。これ自体はさほど前向きな話では無かったように思いますが、14日に発表した本決算を経て火柱高に!

 期初ガイダンスが営業利益で前期比14%増益としたこともありますが、決算発表とセットでDeNAとの資本業務提携を発表。DeNAとタッグを組み、生活者の健康寿命の延伸と医療費のプライマリーバランスゼロを目指すと。2018年1月に付けていた3,000円台の上場来高値を超え、あっさり4,000円台に到達しました。

4 バンク・オブ・イノベーション(4393・東証マザーズ)

 ゲーム株の凄さと怖さが凝縮されたような1カ月に。同社の主力ゲーム「幻獣契約クリプトラクト」(国内累計ダウンロード数は1,200万超)、「ミストラフィア」(同700万超)を今2020年9月期中に中国本土向けで配信すると発表。中国本土デビューによる業績インパクトを先取る動きが凄まじいことになり…26日の上場来高値6,420円まで、月間上昇率+237%を記録していました。

 ただ、上場来高値を付けた26日の引け後、株価急騰の手がかりだった両ゲームの中国配信開始を延期すると発表。海外IPO許諾先企業から、プロモーションの充実を目的に変更する通知を受けたとのことで、中止ではないのですが…。はしごを外された格好になり、翌日から2日連続ストップ安に。値幅制限拡大ルールの変更が“下限”で適用される初の事例になりました。

5 リファインバース(6531・東証マザーズ)

 20日、三菱ケミカルとの資本業務提携を発表。リサイクル処理対象の廃プラ回収業務を三菱ケミカルから受託するうえ、第三者割当増資で約2億円調達することに。好材料であることには間違いないですが、どれくらいの強度の材料かは判別しにくい材料でもあります。ただ、こうした材料でも、好地合い&値幅制限拡大ルールが相まって、「2日連続ストップ高に持っていくぞ!」なる気勢を感じる買い気配に。

 同社も翌日から2日連続ストップ高となり、全株一致した25日は前日比53%高! 発表前の時価総額がわずか26億円だったこともあり、衝撃の株価反応になりましたね。月末時点の予想PER(株価収益率)は240倍に…。

9月に注目したい新興株の動き

 1年で最もマザーズのパフォーマンスが悪い8月を、まさかのマザーズ指数月間17%上昇で通過。経験則が全く通じないのは、コロナ禍で個人投資家が急増した影響が大きいと思います。米国でもロビンフッダーの投資行動が分析され始め、機関投資家も「彼らがどう動くか」を考えながら動かざるを得なくなったと聞きます。日本でも全く同じ、プロの市場参加者も個人投資家を強く意識しています。流動性が飛躍的に上がったため、マザーズ銘柄にヘッジファンドもかなり参戦していると思われます。マザーズの直近IPO銘柄が、東証1部の上位銘柄並みになっているのは、彼らのアルゴリズム売買が活発化していることを示しています(それだけに板が厚くなって、突然の急落などが起こりにくくなった)。

 これまでに経験が無い状態…まさに「ニューノーマル」相場ですね。個人投資家の急増で、ゲームチェンジしています。コロナワクチンの進展のニュースなどがあると、最近は景気回復期待でバリュー株(日本でいえば銀行、空運、陸運、海運、鉄鋼株など)が買われる場面が多くなってきました。そういう地合いはマザーズには逆風。割安なバリュー株がゴロゴロしており、物色の幅は広がります。でも、多くの個人投資家は見向きもしない…。この数カ月、マザーズ株ばかり売買してきた投資家が、急にオールドエコノミーな株を買おうとはならないんですよね。バリュー株の上げが止まったら(グロース株が上がり始めたら)、「次の一手もマザーズ銘柄で!」と身構えている人ばかりです。

 日本の場合は米国と違い、GAFAMやテスラのようなグロースで支持されている大型株が少ないです(任天堂、ソニー、エムスリー、チェンジなど数銘柄?)。グロース株を買おうと思えば、自分好みのマザーズ銘柄を選ぶ…そのマザーズ市場の時価総額は、過去最大になったとはいえ8.3兆円です。これ、東証1部でいえば、中外製薬(7.8兆円)や任天堂(7.8兆円)1銘柄くらいのサイズ。その市場が、1日に2,000億円以上の売買代金を安定してこなしているわけです。これ、凄いことです。

 今の適温相場は、金利の低位安定と、米国の巨大テック株への資金流入で形成されています。米金利が上がらないこと(=米グロース株が急落しないこと)―この1点に世界中の投資家が集中し、バブル的であることを誰もが知りつつ、足を突っ込んでいる状態です。今のところ米金利が大きく上がるカタリストなど無いと思いますが、どうでしょうか…。なお、安倍政権の終焉(しゅうえん)は影響ゼロでしょう。

 日本独自の要因でいえば、9月後半は需給的に注意すべき時期に。9月17日の雪国まいたけから始まり、月末30日までにIPOが9社予定されています。10月6日には資金吸収額が3,000億円を超えるキオクシアのIPOも控えています。もっと資金吸収額が大きいのは、ソフトバンクの売り出し(PO)。資金吸収は9月中旬ですが、国内分だけで9,000億円超に及びます。こうした募集モノに個人投資家の資金が拘束されることが、マザーズ市場の流動性低下要因になることが考えられます。ここに注意! と心の準備はできますが、これもあくまで過去経験則での話。今の「ニューノーマル」相場には心配無用なのかもですが…。